読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

重力ピエロ 伊坂幸太郎著 新潮社 2003年

 ネタばれに、少しなるかもしれません、すみません;

 泉水と春の兄弟は父親が違う。母親が、30件以上もの強姦を犯している未成年の少年に襲われた結果、春が生まれた。そのせいか、春は「性的なるもの」に憎しみに近い嫌悪を抱いている。
 現在、泉水は遺伝子検査などを扱う会社に勤めている。この頃頻発している連続放火騒ぎに、自分の会社も巻き込まれた。驚いたことに、春は泉水に「兄貴の会社が放火に遭うかもしれない」と予言していた。その理由は、「連続放火の現場近くには、グラフィティアートが必ずあるんだ」。
 グラフィティアート――スプレーによる落書き。
 春はそれを消して廻る仕事をしていた。その意味深な落書きの文句は各場所続けて「God can talk Ants goto America 280 century ago」。 二週間後の癌摘出手術を控えて入院中の父親も、「暗号を解くぞ」と大張り切り。泉水も何時の間にやら謎解きに惹き込まれて、放火予定場所に張り込みに行ったり、メッセージの謎を考えたり。
 春の様子がおかしい、と泉水に告げるヘップバーン似の美女・郷田順子、優秀な探偵・黒澤、泉水の仕事相手で売春の斡旋をしている葛城。春が語るネアンデルタール人クロマニョン人との差、ガンジーの逸話、バタイユやドエトフスキーの著書からの引用。幼い頃の、サーカスを見に行った思い出やカッコウの托卵への家族の反応、町内会オリエンテーリングのエピソード。やがて春の、泉水の企みが明らかになる。…

 兄弟のお父さん、お母さんが受けた仕打ちに、心が冷えてしまいました。世の中に、こんなに品のない人が沢山いるのかなぁ。強姦魔は言うまでもなく、親戚の心無い言葉や、春の絵の才能を妬んでの暴言や、お母さんにちょっかい出す人や。でもその分、お父さんのかっこよさが際立つ。「おまえは俺に似て、嘘が下手だ」の台詞に思わず泣きそうになってしまいました。
 余計に見えるエピソードを読んで行くのが結構大変な作業でした。とにかく黙々と読む! 「きっと後で繋がってくる筈だ!」と信じつつ…(笑)。実際繋がったのですが、もう少し整理してくれたら嬉しかったぞ(笑)。 
 ハッピーエンドにはならないんじゃないか、と思ってたのですが裏切られました、よかったよかった。清々しい終わり方でした。