読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

狐火の家 貴志祐介著 角川書店 2008年

 弁護士・青砥純子と謎の防犯コンサルタント・榎本径が挑む密室事件の数々を描いた短編集。

 狐火の家
 古い日本家屋で中学三年の娘が殺された。第一発見者の父親が帰って来るまで他に侵入者はなく、唯一開いていたのは奥の部屋の窓だが、窓の外の泥濘に足跡はない。台所の床下収納庫に隠してあった30kgもの金のインゴットも無くなっていた。
 休暇中に呼び出された弁護士・青砥純子と、彼女が呼び出した防犯コンサルタント・榎本径は足跡をつけない犯行現場からの脱出を見つけ出してみせる。だが、榎本には別の真相が見えていたらしい。
 逃走経路が見つかったことで容疑者となった長男のアパートで、同棲相手の若い女が殺された。どうやら金のインゴットで撲殺されたらしい。犠牲者が出たことで、榎本は真実を公にすることを決める。

 黒い牙
 和菓子屋の若主人が死んだ。大切にしていたペットを妻が殺そうとしている、とペット仲間の男から青砥に依頼が来る。妻を伴ってペット専用に借りていたアパートまで足を運ぶと、そこには大量の毒蜘蛛がいた。若主人は巨大蜘蛛の愛好家で脱皮殻も大切に置いておくほど、死因も毒蜘蛛に噛まれたかららしい。
 パニックに襲われながらも話を聞いてみると、若主人の死に疑問点が出てくる。彼は誰かに殺されたのではないか、毒蜘蛛が彼を噛むよう仕向けた人物がいるのではないか。
 榎本に連絡を取りながら、青砥は真相に辿り着く。

 盤端の迷宮
 ホテルの一室で将棋のプロ棋士が殺された。死因は刃物による刺殺、部屋は中からチェーンが掛けられ密室状態。外側からチェーンを掛ける方法はないか、と榎本が呼び出されるがどうも内側から掛けられたとしか思えない。部屋にあったマグネット将棋盤が、犯行当時まさに行われていた竜王戦の途中経過を指していたことから、榎本は犯人に気付く。TV中継もされていない棋譜を、どうして棋士は知ることができたのか。

 犬のみぞ知る Dog knows
 小劇団の座長が自宅で殺された。容疑者は劇団員三人、座長が飼っているスピッツが懐いている女と懐いているけど犬アレルギーな男と吠えつかれる男。三者三様に可能にも不可能にも取れる中、次の演目はこの事件を題材にすると不謹慎な発言も飛び出す。容疑者の一人にされた女から相談されて、青砥は榎本に番犬についての蘊蓄を聞く。…

 なるほど、と思ったものもあればこりゃ無理だろう、と思ったものもあり。二話目の蜘蛛のトリックなんか、無理と言うかやりたくないと言うか…(笑)。でも蜘蛛は殺しちゃいけませんよ、大きいものはゴキブリ食べてくれるんだから! ゴキブリの天敵は応援しなきゃいけません!
 気になったのはトリックよりも語り口でした。…私、この作家さんとはユーモアのセンスが今いち合わない気がする…。多分読者にくすっと笑って貰うことを狙ってる文章だと思うんですが、何か私の好みとはズレてるんだよな~。青砥さんが狂言回しに使われてることも何だかなぁ、って感じで。
 いや、推理小説としては面白かったです。