グラスホッパー 伊坂幸太郎著 角川書店 2004年

　伊坂幸太郎リターンマッチ（笑）。

　鈴木は妻を轢き殺された。犯人である社長令息・寺原に近づくため、二年後、鈴木は会社組織《令嬢（フロイライン）》に就職する。だが、目の前で寺原は車に撥ねられてしまった。人ごみの中、寺原を「押した」と思われる男を追う鈴木。郊外の家で、「押し屋」の男・槿は妻と二人の息子と暮らしていた。あまりにも平和な日常に、鈴木は戸惑う。
　鯨は不思議な力を持っている。彼と相対するとなぜか皆、自殺したくなる。国会議員・梶に頼まれて彼の秘書に首を吊らせた後、鯨は偶然寺原の事故を目撃する。自分がかつてしくじった唯一の仕事、「押し屋」に先を越されてしまった件を思い出した鯨は、ホームレスの田中に背中を押されたこともあって、心残りを清算する事を決意、「押し屋」を追う。
　蝉は殺し屋。今日も一家惨殺を済ませてきた。梶から鯨の殺害を依頼されるが、仲介役の岩西への苛々が募って遅刻してしまう。その隙に梶は鯨に自殺させられていた。蝉は「押し屋」を殺して寺原の父へ名を売ろうと企て、「押し屋」を追って行った鈴木を探す。その頃鈴木は寺原社長の部下・比予子から、押し屋の居場所を言わないと無関係な男女を殺す、と脅されていた。
　全ての人が鈴木を追う。鯨は岩西と会い、蝉と出会う。とうとう鈴木とも対峙する。鈴木は槿一家を無事守れるのか。…

　出てくるのはどこか病んだ人たち。何かかさかさに乾いた感じ。
　鈴木さんでさえ「大丈夫かな」って思うもんなぁ。奥さんのバイキングに対する心構えも、「そりゃおかしいよ！」と突っ込みつつ、最後にはこれで少し救われましたね。
　しかし、物凄く危ういタイミングで物事が繋がってくなぁ。
　ホームレスの足の悪い田中、ってあの田中さんなんでしょうね、リョコウバトも出てきたし。