読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

最後のひと葉 オー・ヘンリー作/金原瑞人訳 岩波少年文庫 2001年

 短編集。

よみがえった良心
 金庫破りに抜群の腕前を持つジミーは、出所してからも数々の金庫を荒らしていた。だがとある町で、銀行家の娘アナベルに恋をする。真面目に靴屋を営んで、大成功を収めるジミー。アナベルとの交際も順調に進み、二週間後には結婚式、というある日、アナベルの姪っ子が銀行の金庫に閉じ込められてしまった。折しもジミーの前には彼を追う宿命の好敵手ベン・プライス刑事が。でも今すぐ金庫を開けられるのは、ジミーしかいない。婚約者や刑事の目の前で、ジミーは金庫を破るのか。

警官と讃美歌
 暖かい刑務所で冬を過ごしたいホームレスのソービー。食い逃げだの器物破損だの女性への嫌がらせだの、色々試みるが上手くいかない。落ち込んで古い教会の前に佇んでいると、改心の念が浮かんできた。

株式仲買人のロマンス
 株式仲買人ハーヴェイ・マックスウェルはあまりに忙しい毎日を過ごしている。それでも速記係のミス・レスリーの控えめな美しさには、心惹かれずにはいられない。どうやら昨夜、楽しいことがあったようだ。

犠牲打
 雑誌「ハースストン・マガジン」に原稿を載せてほしいアレン・ストレイン。その編集方針を知っているアレンは、編集長がいつも原稿を読ませて意見を聞いている、速記係のミス・パフキンに近づいた。

二十年後
 夜、金物屋の店先で葉巻をくゆらす男が一人。警官が職務質問してみると、二十年前、幼馴染とここで待ち合わせの約束をしたのだと言う。お互い、どんな姿になっていようとここで再会しよう、と。

伯爵と結婚式の客
 茶色のワンピースを着た地味な娘ミス・コンウェイは、アンディ・ドノヴァンのお眼鏡にはさっぱり引っかからなかった。だが後日、喪服を着た彼女には一目で虜になってしまう。聞けば、婚約者が亡くなってしまったのだとか。悲しみにくれる彼女は何とも魅力的だった。

ジェフ・ピーターズの話
 いんちき薬を売り歩いていたジェフ・ピーターズはある町で、嘘八百を並べ立て、市長に心霊霊媒治療を施す。まんまと250ドルせしめたかと思われたが…。

一千ドル
 ジリアンはおじから一千ドルの遺産を受け取った。ただし使い道の明細を提出するよう弁護士から念押しされる。友人や御者や歌姫、通りすがりのホームレスにまで使い道を相談するジリアン。だが彼が望んだのは、おじが引き取って育てていた娘の幸せだった。

都会の敗北
 田舎から都会に出てきて、弁護士として成功を収めたロバート・ウォームズリ。旧家の令嬢アリシアと結婚もして、上流階級の紳士の仲間入りを果たした。洗練されてすっかり都会人と化したロバートは、母からの手紙をきっかけに、妻とともに実家の農場に里帰りする。

金の神と恋の使者
 時間は買えない、と項垂れるリチャードに、大金持ちの父親アンソニーは言い放つ。金で買えないものなんてない、と。恋するエレンとじっくり話す機会もない、と嘆くリチャード。だが馬車で送り迎えする数分間だけの時間が、ある日交通事情の悪さから数時間にも及ぶ。

緑のドア
 ルドルフ・スタイナーはある日、大柄な黒人からチラシを受け取る。歯医者の宣伝の筈のそれは、彼の分だけ「緑のドア」と書かれたもの。何かに導かれるように、ルドルフは歯医者のあるアパートの三階に向かう。その緑のドアの向こうには、青白い顔の娘がいた。

回転木馬のような人生
 治安判事ベネイジャ・ウィダップの元を、離婚したいと言う夫婦が訪れた。離婚手続き料金は5ドル、だがそれを払うと妻に払う離婚手当てがない。翌日まで延期になったその日、判事は強盗に襲われる。

賢者の贈り物
 デラの膝下まである美しい髪は、祖父からの金時計と共に、夫ジェイムズの自慢の一つ。クリスマスプレゼントを買うために、デラはその美しい髪を売ってしまう。ジェイムズへの贈り物、金時計に合うプラチナの鎖を買うために。

最後のひと葉
 肺炎に罹って、生きる気力をすっかり失くしてしまったジョンジー。窓から見える蔦の葉がすっかり落ちてしまったら、自分も死ぬんだと思い込んでしまった。ルームメイトのスーは、階下に住む売れない画家の老人にそのことを相談する。…


 TV番組で予備校教師の林先生が紹介していて、気になった一冊。話題に上げていたのは『一千ドル』だったのですが、同じように気になった人結構沢山いたようで、大人向けの本は予約が何人か入ってました。
 読み始めて思い出しました。私、もともとこういうウィットに富んだ短編は凄く好きだったんだわ。
 ジェフリー・アーチャーしかり、アガサ・クリスティしかり。皮肉だったり予想外だったり、心温まる話だったり、決して不幸に成り切らない結末。『賢者の贈り物』や『最後のひと葉』は学校の授業で読んだ覚えがありましたが、それにしてもこんな小洒落た言い回しで表現されてたっけ。
 それにしてもこの作家さんは、恋というか愛情というかをとても素敵なもの、重要なものと位置付けてたんですね。外国の文学だからこそ素直に受け入れられるような。
 「珠玉の短編」って言葉は、やっぱりあるよなぁ、としみじみ思ってしまいました。