読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

サエズリ図書館のワルツさん 1 紅玉いづき著 創元推理文庫 2023年

 連作短編集。ネタばれあります、すみません;

 第一話 サエズリ図書館のカミオさん
 その日、上緒さんは朝から不運だった。星占いも血液型占いも最下位、せっかく作ったお弁当を忘れ、職場ではお局様に八つ当たりされた。帰りにファストフード店に寄ったら満車で、隣の公共施設の駐車場に停めようとして、接触事故を起こした。逃げようとアクセルを踏み込んだらパンプスのヒールが折れて、上緒さんは観念した。施設に入って、車の持ち主を探すことにする。そこは図書館だった。
 電子データ全盛のこの時代に、紙の本を貸し出す私立図書館。館長は割津唯、特別保護司書官だと名乗る。ぶつけた車の助手席の本から、あっと言う間に所有者を特定してくれた。仲裁に似たことまでして、一冊の本も読んだことないという上緒さんに、資料案内(リファレンス)もしてくれた。だがその行為に対し、「貴重な文化の冒涜と虐殺だ」と怒鳴り込んで来る老人もいる。図書館の蔵書は、ワルツさんの父親のコレクションが大元になっているらしい。 

 第二話 サエズリ図書館のコトウさん
 古藤さんは小学校教諭で、サエズリ図書館の常連。忙しさにかまけ、娘との関係はちょっとぎくしゃくしている。ある日 図書館で、古藤さんは金髪の兄妹を見かけた。彼らは学校に行っていないらしい。

 第三話 サエズリ図書館のモリヤさん
 夏のある日、サエズリ図書館に乗り込んで来た森屋さん。図書館の「新郷朗文庫」は自分の祖父の蔵書だったから返せ、と要求してきた。晩年、家計を顧みず、貴重な書籍を大金で購入し続けた祖父。自分の脳手術の代金として、脳外科医 割津義昭に本を引き渡していた。長じて守銭奴になった森屋さんは、祖父が本に秘密の書き込みをしていたことを思い出す。

 第四話 サエズリ図書館のワルツさん
 図書館の本が盗まれた。本に埋め込まれたチップを元に、ワルツさんは本の現在地へ急ぐ。都市部(シティ)と呼ばれる 戦禍の残る場所、そこはワルツさんが、割津義昭に引き取られるまで育った故郷だった。

 番外編 ナイト・ライブラリ・ナイト 真夜中の図書館のこどもたち
 コトウさんに連れられて、児童たちはサエズリ図書館で宿泊体験をすることに。そこで啼斗は、金髪の兄妹アダムとエヴァに出会った。図書館に通っているらしい彼らは、喋れない少年 樹陸の捜索を手伝ってくれるという。…

 2012年、星海社から出版された単行本を再編集、文庫化されたもの。…だそうで。
 紅玉さんの作品はどうにもエモーショナルで、このお話も例外ではありません。妙に感情が揺さぶられる。
 未来の話なのかしら、それにしては車ぶつけたりして回避システム動いてないのね、インフラも不安定で、異世界というか平行世界と考えた方がいいのかしら、と頭に疑問符を浮かべながら読むうち、この世界の状態が明らかになります。
 文庫本の常で裏表紙に紹介文が載ってるんですが、これ、軽いネタばれになってるんでは…。私は今回、偶然にも裏表紙の文章に目を通さなかったんですよね。よかった、と強く思いましたよ(笑)。
 第一話のカミオさんが第三話にも出てくるんですが、これが結構 鬱陶しかった(苦笑;)。第一話では彼女目線で書かれていたので気が付かなかったんですよね、こりゃお局様も色々言いたくなるわ。
 アダムとエヴァの兄妹についての詳細は記されず、これは次巻以降に持ち越されるのかな。2巻も出てるようなので楽しみです。