読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

笑って人類! 太田光著 幻冬舎 2023年

 ネタばれになってるかな、すみません;

子供達よ、信じるんだ。未来はいつも面白い。
世界の平和のため、ダメダメ総理が獅子奮迅!?

主要国リーダーが集結する“マスターズ和平会議”に極東の小国・ピースランド首相が、まさかの遅刻。そのおかげで惨劇を免れた彼は、ドン・キホーテのごとく立ち上がるが……。

笑いと興奮と感動と――。
「言葉の力」を信じる爆笑問題太田光、祈りのような書き下ろしエンターテインメント!

「笑いもので結構! 私の子供の頃の夢はコメディアンだ。偉大なコメディアンになって世界中を笑わせたいと思っていた。今こそそれを叶えてやる」

 “マスターズ和平会議”はテロ国家共同体ティグロ代表・ブルタウにより破壊された。会議に遅刻し、世界に恥を晒したピースランド首相・富士見はマスコミから糾弾され、デモ隊から生卵をぶつけられ、支持率は地に落ちた。しかし彼は会議を再開するべく、フロンティア合衆国の大統領代理・アンに想いを込めた手紙を送る。
 何とかこぎ着けた第二回マスターズ和平会議も、謎の人物Dr.パパゴによる電波ジャックで中止に追いやられた。彼が喋る、誰もを人間爆弾にしてしまえるという”ヌークリアヒューマン”なる技術について、ピースランドの中学生 翔は首を傾げる。何故ならそれは、自分が数年前に一人で制作したアニメの設定そっくりそのままだったから。翔は天山の噴火で兄・翼と故郷を喪い、両親と共にD地区に移住している少年。D地区は100年前、大きな地震津波に見舞われ大量の放射性物質で汚染された地区で、今はその地下に使用済み核燃料を懐抱し、地上部分は実験都市として開発されていた。発展した科学は「亡き人の魂を宿らせる」が謳い文句のアンドロイドを作り出し、母はそれを翼として扱っている。翔も自身のひねくれた性格も相まって、家庭でも学校でもネット社会でも居場所を失くしていた。
 そもそもブルタウとは何者だったのか、ティグロの若き外相アフマルとアドムはブルタウに騙されていたのか、Dr.パパゴの正体は。その裏に前大統領と副大統領、亡き父の影を見て、アンは怯える。富士見を取り巻く桜を始めとした個性のキツイ秘書たちと、アンと彼女を支える国務長官・ダイアナは、武器ではなく「言葉の力」で、どんな国のどんな立場の人間も置き去りにせず、世界を一つにしようとする。しかし、両親をテロで亡くしたアンには、ある秘密があった――。    (出版社HP紹介文に付け足しました)

 爆笑問題 太田光さんの書き下ろし小説。分厚さにまず驚きました。532頁、二段組というボリューム、読むのに結構時間かかりました。というか、途中から、急がずゆっくり読みたいと思ってしまった。
 映像作品として考えていたんだろうな、という内容。何だか三谷幸喜さんを連想しました(太田さん、イヤだろうなぁ・苦笑;)。人物の登場の仕方、立場や性格等、設定の説明が順序立っていてシナリオ的。映像なら一瞬のことを言葉で説明するから、どうしても長くなる感じ。
 太田さん、優しいなぁ。惹句にある「祈りのような」がよく分かる。「小さな泡が集まって大きな泡になる」という一節に、佐々木淳子さんの『ダークグリーン』を思い出しました。
 女性登場人物がかなり理想化されている気配はありましたが、男性キャラは誰も欠点だらけ、清廉に見える人にも二面性があり、これが大きなどんでん返しになる。ステレオタイプな人もいるんですがね。
 翔くんや総理夫人の洋子さんがもうちょっと関わってくるのかと思っていたので、そこは肩透かしでしたね~。
 アンはどうなるのかな。いずれ猫のアッシュも周囲の人も死んでしまって、取り残されてしまうんじゃないかな。『ファウンデーションシリーズ』のダニールみたいになるんだろうか、それに耐えられるのかな。
 この講和条約の効力がどれだけのものなのか、人類はそこまで理性的に振る舞えるのか。本当、祈りのような話でした。