読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

サピエンス全史(下)――文明の構造と人類の幸福 ユヴァル・ノア・ハラリ著/柴田裕之訳 河出書房新社 2016年

近代に至って、なぜ文明は爆発的な進歩を遂げ、ヨーロッパは世界の覇権を握ったのか?
その答えは「帝国、科学、資本」のフィードバック・ループにあった。
帝国に支援された科学技術の発展にともなって、「未来は現在より豊かになる」という、将来への信頼が生まれ、起業や投資を加速させる「拡大するパイ」という、資本主義の魔法がもたらされたのだ。
そして今、ホモ・サピエンスは何を望み、テクノロジーはあなたをどのような世界に連れて行くのだろうか?
人類史全体をたどることで、我々はどのような存在なのかを明らかにする、かつてないスケールの大著!  (表紙折り返しの紹介文より)

 何故だか時間が掛かった下巻、どうしてなんだろうな、ちゃんと面白かったんですけど。
 アステカを滅ぼしたスペイン人が悪臭芬々だったとは(苦笑;)。金を有難がるスペイン人、ただ綺麗なだけで実用性のない金属という認識しかないアステカ人。共通の価値観、というのも虚構でしかない。資本主義、共産主義と宗教を同一と言い切る作者に、この人母国で迫害されてなきゃいいんけど、とやっぱりいらぬ心配をしてしまいました(苦笑;)。
 現実的になればなるほど神様から離れて行く。保険制度を立ち上げるために二人の牧師が始めた統計が、今では大きな会社に!ってエピソードは「これ、映画になるよ!」と本気で思いましたよ。
 仏教と他の宗教との違い、というのも新鮮でした。確かに、仏教には神様いないなぁ。
 そうそう、「パイを奪い合う」という表現のパイは、私ずっと麻雀の牌から来てると思ってました! アップルパイとかのパイだったのか! どちらにしろ限られたものを奪い合う、という意味合いになるかとは思うんですが、会社の経営計画等で「もっと売り上げを伸ばす!」等々言ってるスローガンに、「でも上限はあるよ」とこっそり思っていた私は、きっと資本主義に向いていないのでしょう(苦笑;)。
 最後は何だか『機動戦士ガンダムSEED』の世界のような未来予想で終わります。「まだまだ先じゃん」とか思ったらいけないんだろうな、科学革命以降の時代の流れの速さを見ると。いずれホモ・サピエンスが敗者になる時代が来るんだろうか。
 事例等で書かれるエピソードで、何だか日本の記述が多いなと思ってたら、この本の日本語版を出版するに当たって作者がわざわざ書き足してくれたのだとか。…いい人だなぁ(しみじみ)。博覧振りに圧倒されました。