読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

罪の声 塩田武士著 講談社 2016年

 ネタばれになってる気がします、すみません;

 これは、自分の声だ。
 京都でテーラーを営む曽根俊也は、ある日父の遺品の中からカセットテープと黒革のノートを見つける。ノートには英文に混じって製菓メーカーの「ギンガ」と「萬堂」の文字。テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。それは、31年前に発生して未解決のままの「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声と全く同じものだった。
 体調の悪い母には何も訊けず、俊也は亡父の幼馴染堀田信二に相談する。堀田は心当たりがあったらしく、俊也の伯父 達雄の友人との会合をセッティングしてくれた。そこで知ったのは、祖父が左翼による“誤爆”によって死んだこと、その後の理不尽な扱いから達雄が反資本主義に傾倒して行ったこと。暴力団員、利権屋との関わりまで聞いて、俊也は伯父の足取りを追う決意をする。だが、伯父と同じ柔道教室に通っていた元警察官・生島とその家族、特に子供達のその後を知って、そこで調査を止めた。
 大日新聞記者阿久津は文化面担当としての安定した日々を送っていたが、何故か社会部から抜擢を受け、31年前の未解決事件「ギン萬事件」を取材することになる。オランダの「ハイネケン事件」との関連というか細い繋がりを元に英国へ、帰国後改めて事件を見直し、新たに得た手掛かりから犯人グループの会話と思われる無線の録音テープを手に入れ、また会合現場と思われる小料理屋にまで行き着く。やがて思い付く一つの仮説。当時の犯人の矛盾した行動、それは犯人グループが二手に分裂していたということではないのか。
 阿久津と俊也の邂逅、曽根達雄への手掛かり。被害者への指示が録音されていた子供の声の持ち主は、今どうしているのか。阿久津は再び英国へ飛ぶ。…


 いや~、回ってくるのに1年かかりましたね。何しろいい加減話題になってから予約したもので(笑)。
 モデルになっているのは勿論『グリコ・森永事件』。変わっているのは名前だけ、起きた事件等はそのまま現実の通りなぞっているとのこと。当時私は十分物心ついていた年齢なんですが(苦笑;)、もうすっかり忘れてたり知らなかったりしたことばかりで、興味深く読みました。そうか、株価で儲ける、とかって方法もあったのか。
 何しろ現実にあったことが下敷きになっているので、「面白かった」という言葉は使い辛いことこの上ないのですが、犯人グループが仲間割れを起こしていたのではないか、という説にはかなり説得力を感じました。実際の真相を知りたいですね。子供の声の正体、その子の生末も。