読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

バベル九朔 万城目学著 角川書店 2016年

 ネタばれあります、すみません;

 俺 九朔満大は5階建ての雑居ビル「バベル九朔」の管理人をしながら作家を目指している。巨大ネズミ出没、空き巣事件発生、店子の家賃滞納と騒がしい毎日のなか、ついに自信作の大長編を書き上げた。新人賞の応募受付締め切り日は目前、だがタイトルが決まらない。よりにもよってそんな時に、全身黒ずくめの「カラス女」が現れて満大を付け回してきた。恐怖も相まって締め切りを逃してしまった満大。カラス女は訳の分からないことを問うてくる。…「扉は、どこ? バベルは壊れかけている」。満大はテナントのギャラリーに逃げこんである絵に触れた。――転瞬、満大は湖の真ん中にいた。…絵の中に取り込まれてしまったのか? そこで出会った少女は言う「鍵を持って、もういっぺん、塔にいらっしゃい」。
 歩いても歩いても同じ場所に戻る閉じた世界、辿りついた空までも届く塔は、ここも「バベル」というらしい。延々上へと続く階段と見知らぬテナント達は、現実世界の「バベル九朔」に歴代入っていた店なんだとか。現実世界の「バベル九朔」を建てた満大の祖父の九朔満男は採算度外視で画廊を経営し、色々な事業に手を出しては失敗するような店子を、率先して融通してやっていた。「世界には『無駄』が必要だ」と。
 何故かこの世界にもいる店子の探偵 四条、入れ替わり現れるカラス女、授賞式の夢まで見せて来る祖父は、何故か満大に「ここ」にいて欲しいらしい。
 祖父は亡くなっているのに存続し続けるバベルの世界は、満大と関係している。満大は少女の命運も含め、決断を迫られる。…  (出版社紹介文に付け足しました)

 主人公の管理人としての日々がまぁリアルだなぁと思ってたら、奥付の著者紹介曰く、本当に雑居ビルの管理人をやっていたそうで。…うん、境遇も含めてそうじゃないかと思ってたよ。
 どたばたと不可思議な世界、内容が理解できてる気があまりしませんが、ラストにとにかく驚きました。「え、残るの、壊さないの⁉」ってなもんで。三年かけて書いた小説をバラまく、しかも「無駄がそんなにない」ってことは出来がいい、ってことじゃないか、勿体ない(泣;;)。他人事ながらやるせなくて、でもそれを選んだのは本人だし。
 棋士を目指していた四条さんの言葉「向かい続けることこそが才能だったんだ」「当たり前のように淡々と何年も何十年も向かい続けることが立派な才能なんだ」ってのは確かにその通りかも、と思いましたが、突き抜けるには、それに加えてもう一つ何かが必要なんじゃないかなぁとも。
 蜜村さんの出身地を知っていたという事は、初恵おばさんの一部は戻ったという事で、それがせめてもの慰めなんでしょうか。何か、いずれ別の作品に繋がりそうな気もしました。