読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

東京會舘とわたし 下 新館 辻村深月著 毎日新聞出版 2016年

 後編。

 第六章 金環のお祝い 昭和五十一年(1976年)一月十八日
茂木芽衣子は69歳。夫が生きていれば、今年は金婚式だった。建築家の夫は、東京會館の建て替えを惜しんでいた。今日、芽衣子は新館になってから初めて東京會館を訪れる。

 第七章 星と虎の夕べ 昭和五十二年(1977年)十二月二十四日
クリスマス・イブ。毎年行われる越路吹雪のディナーショーの裏側を、新人ボーイ志塚徹平から見た一幕。

 第八章 あの日の一夜に寄せて 平成二十三年(2011年)三月十一日
あの地震の日、三科文佳は銀座にいた。東京會館のクッキングスクールで共に学んだ友人たちと東京に出ていた。混乱する状況の中、文佳たちは東京會館のカフェテラスへ向かう。クッキングスクールの思い出を胸に。

 第九章 煉瓦の壁を背に 平成二十四年(2012年)七月十七日
小椋真護は第147回の直木賞を受賞した。記者会見は東京會館で行われる。小椋は十代の頃、東京會館のマナー教室に参加したことがあった。群馬の田舎で、権威のある価値観しか受け入れない父親に反発していた頃。父親の認めない「エンタテインメント小説」を書き続けること、いずれ直木賞を獲る、と決意したのはこの東京會館でだった。

 第十章 また会う春まで 平成二十七年(2015年)一月三十一日
東京會館、二度目の建て替えを迎える最後の日。中野優里は、東京會館で結婚式を挙げた。曾祖母以来、母娘四代で東京會館にお世話になっている。曾祖母・静子も、今に続くあの日を思い出していた。…


 第九章が一番辻村さんぽい話だったかな、という気がした一冊。いや、ちゃんと他の話も辻村さんらしく心温まる話なんですが、何となくエピソードが借り物的な雰囲気がしてたんだ、てのを、第九話読んで気付いたもので。
 とはいえ、やっぱり面白かったんですけどね。クッキングスクール、シニアコースへ参加する旦那さん方への注意喚起、なんてのは「よくここまで…!」でしたし(笑)。
 「おもてなし」の善意の精神が脈々と受け継がれる世界、まさしく温故知新。東京會館の人たちもこんな風に書いて貰えて嬉しかっただろうなぁ。
 …でも辻村さん、ミステリまた書いてくれないかしら。あの怒涛のラストスパート、また味わいたいなぁ。