読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

太宰治の辞書 北村薫著 新潮社 2015年

 時を重ねて変わらぬ本への想い……《私》は作家の創作の謎を探り行く――。

 芥川の「舞踏会」の花火、太宰の「女生徒」の“ロココ料理”、朔太郎の詩のおだまきの花……その世界に胸震わす喜び。自分を賭けて読み解いていく醍醐味。作家は何を伝えているのか――。
 編集者として時を重ねた《私》は、太宰の創作の謎に出会う。《円紫さん》の言葉に導かれ、本を巡る旅は、作家の秘密の探索に――。
 《私》シリーズ、最新作!                             (出版社HPより)

 
 あ、北村さんの新刊出たんだ、ってんで予約を入れた後で、《私》シリーズだと知りました。しかも、作中時間が随分経って、主人公が中学生のお母さんになっているという設定だということも。
 北村さん、一気に間を飛ばすんだよなぁ。どう考えても《私》にとって一大イベントである、伴侶との出会いとか子供ができた喜びとか書かないのね~、と確か『ターン』でも思ったんでしたっけ。
 とはいえ、《私》との再会が懐かしくない筈はなく。語り口は相変わらず、読んだら影響受けるんだよなぁ、この文章。第二話 女生徒で登場する正ちゃんもやはり変わりなくあの口調で、円紫さんは寄席でトリを取るような大御所になっているのでしたよ。
 芥川だ朔太郎だと言いながら、本書のメインは太宰治。何でみんな太宰が好きなんだ?? 今回の『女生徒』は私も既読でしたが、そんなに印象に残った覚えが…。しかも今回の内容だと、もうほとんど盗作じゃないか! ファンからの日記を参考に、っていいの、これ? フレーズもそのまま使ってるけど??
 「生れてすみません」が太宰の言葉じゃない、というのも今回初めて知りました。そりゃ今ほど著作権に厳しい時代じゃなかったんだろうけどさ、でも勝手に自分の言葉のように発表されてしまった真の作者の気持ちってどうなんだろう。大デュマが、やはり盗作問題で裁判を起こされて、「でも俺がアレンジして書いた方が面白いじゃないか」って言ったのとはレベルが違うような…。しかも大デュマはその人たちの生活の面倒を見てた筈だし。太宰の良さがぴんとこない私には、これで評価されていいのかなぁ、と首を傾げることしきりでした。
 とはいえ、取材を申し込まれた各出版社だの図書館だのが、一様に対応が親切だったことは凄いなぁ、と思いました。そりゃ実際には北村さんが行ったんだろうから、と思いつつも、みなさん本好きな者同士、融通しあうんですね。
 そうそう、中にピースの又吉さんの言葉も引用されてました。この間の『アメトーーク!』で、又吉さん北村さんの作品一つ選んでましたっけ、エールの交換的な意味もあったのかなぁ。…というのは穿ち過ぎでしょうね(苦笑;)。