読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

宝石商リチャードの謎鑑定【5】 祝福のペリドット 辻村七子著 集英社オレンジ文庫 2017年

 シリーズ5冊目。

 case.1 挑むシトリン
 「スペインでフラメンコギターを極めてくる」と下村が日本を出て行った。空港まで見送った帰り、正義は大きなシトリンの指輪をはめた関西弁の女性と出会う。

 case.2 サードニクスの横顔
 今度のお客 画家の乙村さんはカメオをご所望だという。だがどうやら新しいカメオより、今持っているカメオについての屈託を、リチャードに解いて貰いたいらしい。父親の再婚相手から贈られた日本髪の女性のピンクカメオ、乙村は義理の母に淡い想いを抱いていた。相手の意図が読めず困惑している乙村に、リチャードが一つの可能性を示す。

 case.3 ジルコンの尊厳
 就活に思い悩み、エトランジェを辞めるタイミングを計っている正義に、シャウルがリチャードの過去の出来事を明かす。かつてリチャードはスリランカでブルー・ジルコンをトパーズと偽って売っていた 荒んだ時期があったこと、シャウルがリチャードを連れて帰った自宅にはモニカと名乗る少女がいたこと、彼女は持参金目当ての結婚の犠牲にあい、顔の左半分を硫酸で焼かれるような目にあっていたこと。モニカの持参金の一つだったジルコンのティアラが、リチャードをある行動に駆り立てる。

 case.4 祝福のペリドット
 喫茶店で出会った後、荷物持ちをした正義をもてなしてくれた老婦人は、何の偶然かリチャードの家庭教師(ガバネス)だった女性だった。だが彼女は、自分のことをリチャードに話すな、と正義に口止めする。リチャードは正義お手製のプリンの味の変化に気付き、自分の幼い頃のクリスマスのエピソードを語る。母のペリドットの首飾りがなくなったこと、その窃盗疑惑が日本人の家庭教師に向けられたこと。昆虫学者の父と女優の母の復縁はそれで無くなり、家庭教師は日本へ帰った。大人になって真相に気付いたリチャードは、ずっとガバネスを探していたらしい。

 extra case. 聖夜のアンダリュサイト
 クリスマス・イブ、お客が差し入れるケーキの数々にさすがのリチャードも辟易している。アンダリュサイトの写真を兄に送るリチャードを見ながら、正義はリチャード兄弟の関係修復を願い、聖夜の日、自分が今ここにいることが「楽」だとリチャードに伝える。…

 リチャードも昔は、結構突っ走る傾向があったんだなぁ、というのがわかる第5巻。なんだ、正義君と似た者同士なんじゃん(笑)。モニカの「鈍感すぎていろんな人を傷つけてきたんじゃないのかな」って言うのは、でもそれが防御力になったりもするんだけど。インドの持参金制度 ダウリーについて、裕福な人たち限定の習慣だったのに普通の人にも模倣が始まり…ってあたりは、どこの国にもあることなんだなぁ、と遠い目をしてしまいました。日本でもそうですもんね、着物での決まり事なんて、戦後に呉服屋が広めたものだそうですし。ただ、それで命を奪われるとか洒落になりませんが。
 ルツェルンの『瀕死のライオン』は私も見たことがあります。思いのほか胸に来るものがあって、そうか、実際見てみないと分からないものがあるんだなぁ、と思い知らせてくれた彫像です。思いがけない所で文章でですが巡り合えて、妙に嬉しかった。
 さて、リチャードは正義と谷本さんの仲を取り持とうとしていますが、…所々正義口説こうとしているような…??(笑)
 次巻に続きます。