「宝石商リチャード氏の謎鑑定」シリーズ、ファンブック。
★辻村七子の個人ブログ掲載のショートストーリー&書店購入者特典ショートストーリーをすべて収録!
★雪広うたこ描き下ろしピンナップ!
★口絵として既刊文庫カバーイラスト全点収録!
★リチャード&正義の初期設定画初公開! …だそうで。
クレオパトラがアントニウスと競った逸話「真珠を酢に溶かして飲む」についてリチャードと語り合う:『クレオパトラの真珠』
クンツァイトとモルガナイト、人名に因んだ石の名の話に、「ナカタナイト」「リチャーダイト」を連想する正義。:『エトランジェの日常 クンツ博士とモルガン』
リチャードはラーメンを食べるのか? 折しも目の前にある石はクリソプレーズ、意味は「金」と「ニラ、もしくはネギ」だとか。:『繋ぐクリソプレーズ』
リチャードが正義にくれるという石はセレスタイト、じゃがいものような塊を割ると水色の結晶が現れた。正義はその色を、リチャードの目の色のようだ、と思う。:『空漠のセレスタイト』
アイオライトはその昔、ヴァイキングが海上で太陽の位置を知るのに使ったという。「正しい方向を指し示す石」、それはリチャードのようだと正義は伝える。:『曇天のアイオライト』
資生堂パーラーからの帰り「月がきれいだ」と叫ぶ正義に、夏目漱石と二葉亭四迷の逸話を話すリチャード。正義は「死んでもいい」と口にする。:『ムーンストーンの慈愛』
「タイガーアイは第三の目だから、魔よけになるのだ」貿易商のお客の言葉の意味を解説してもらう正義。己を客観視すること、とリチャードは語る。:『ふりかえればタイガーアイ』
谷本さんの誕生日に、ハーキマーダイヤモンドを贈った正義。居合わせた谷本さんの友達は銀座の和菓子屋さんでバイトしていて、正義も美貌の店主も見かけたことがあるらしい。:『ハーキマーダイヤモンドの夢』
「記念日」の概念がよく理解できないと呟く正義に、リチャードは正義の勤続一周年をお祝いしたい、と切り出してきた。物質的に欲しいものがない正義は、「記念グッズ」という発想を捻り出す。:『お祝いの日』
リチャードと二人で鎌倉を訪れた正義。とある石碑に彫られているシンハラ語の文言を、リチャードは読み上げる。正義はそれを、特別な体験だ、と感動する。:『鎌倉仏教紀行』
とある高級スーパーで、メロンソーダの隠し味に悩む人当たりの言い男の子。後日、同じスーパーに金髪碧眼の美男子が缶詰のチェリーを買いに来る。:『おいしいレシピ』
銀座でオーダーメイドで仕立てて貰ったスーツを着て、リチャードからは「乗りこなしなさい」とのアドバイスを受けて、正義は大学の卒業式に臨む。:『スーツの話』
卒業の春、正義はリチャードを大学近くのラーメン屋に誘う。いつかの約束を漸く果たせた、思い出の店での食べおさめはリチャードとがいい、と。:『ラーメンの話』
ジェフリーが、リチャードの誕生祝いを兼ねたクリスマスパーティを催し、正義はサプライズで同行を誘われた。大慌てで準備したのは量販店で購入できるサンタ衣装、そして5月。正義の誕生日、スリランカまで美貌のサンタが現れた。ルベライトのルースを持って。:『サンタ襲来』
早朝、リチャードがキッチンで何かをしている。でも起きて来た正義が見たものは、あまりにも片付いた台所。正義が作ったプレーンオムレツ、ソーセージにフルールサラダの朝食を、リチャードは絶賛してくれた。:『リチャード先生のお料理教室』
スリランカの首都コロンボの書店で、正義はシンハラ語の参考書を買う。子供向けの絵本も。:『コロンボの書店』
お客さまが忘れて行ったかき氷機で、様々な色合いのかき氷を作る。今一つ不器用なリチャードのために、正義はアンモライトのようなかき氷を作ってやる。:『プレイ・オブ・カラー』
宝石商見習いの友人から紹介されて、下村はとあるイギリス人に、リモートで日本語を教えている。ギターとピアノでセッションなどしながら。:『下村と年上の友達』
誰かのためにお茶を淹れる幸せ、リチャードの傍で働けるありがたさを噛みしめる正義。:『アイデンティティ』
「特別な日を祝いたい」気持ちがピンとこない正義。「祝いたいから特別な日なのだ」と返すリチャード。リチャードは正義を資生堂パーラーに誘う。:『お祝いに寄す』
香港のお客様からのお土産は色とりどりの月餅、正義が知っているそれとはまるで違う。香港の月餅事情を聞きながら、正義はリチャードを月のように綺麗だ、と思う。:『ムーンケーキの季節』
空港にて、アドベントカレンダーを切っ掛けにお喋りに興じる男。彼は三人兄弟の真ん中で、その昔、甘いもの好きな弟は、アドベントカレンダーのお菓子を一気に食べてしまったことがあるのだとか。:『空港にて』
ホテル住まいが続く正義に、ジェフリーはリチャードの昔の写真を見せた。正義は青の時代みたいだ、と呟く。:『新時代』
エトランジェに勤め始めて二か月が経った頃のこと。お客様の「私の宝石箱」のキーワードから、正義はリチャードを、全ての宝石に例える。:『宝石箱』
スリランカで宝石商見習いをしている青年のブログに、コメントを寄せる人々。中でも一人、絶妙なタイミングでコメントを寄せる人物がいる。:『スリランカ中田日記』
オペラのCDと共に、キッチンで大声で歌っていた現場を、リチャードに見られてしまった。しどろもどろになる正義に半年後、バースデープレゼントとして差し出されたのは、とある椅子の年会員証だった。:『オペラびいき』
その他、これまでの各話粗筋紹介やレシピ、一般募集された中田正義への質問コーナーやジェフリーへの人生相談、コミカライズ等。
このごろは「初版限定特典」なるものが漫画とかラノベとかにつくことが結構あって、販促のためには有効なんだろうけど、途中からの新参ファンからすると辛いものがあるよなぁ、読みたかったらメルカリだのヤフオクだの古本屋(でも扱ってるのかしら;)だの地道に探すしかないもんなぁ、とか思ったことがありまして。ですからこのファンブックの有り様は、新規のファンに優しいなぁ、とちょっとしみじみしてしまった(笑)。
正義の相変わらずの無自覚、天然な迂闊言動、好きな人に色々してあげたい細やかな気遣い、優しさ。リチャードの意外な側面やオトコマエっぷり等々、本編の中には入りきらなかったんだろうこまごましたエピソード、キャラクターのファンからしたら嬉しいでしょうね。ラーメンの話とか正義の誕生日プレゼントとか、ちょっとした伏線回収にもなってるし。
作者の、各巻の裏話も楽しかったです。
いずれ第二弾が出るんでしょうね。本編は続いてるし。