読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ののはな通信 三浦しをん著 角川書店 2018年

 ネタばれあります、すみません;

 横浜で、ミッション系のお壌様学校に通う、野々原茜(のの)と牧田はな。庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なののと、外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。二人はなぜか気が合い、かけがえのない親友同士となる。しかし、ののには秘密があった。いつしかはなに抱いた、友情以上の気持ち。それを強烈に自覚し、ののは玉砕覚悟ではなに告白する。不器用にはじまった、密やかな恋。けれどののが試したある行為がはなには耐え切れず、はなはののに、今まで書いた全ての手稿を送り付け、別れを告げる。
 再び連絡を取りあい、交流を再開したのは大学三年になってから。東大に通うののは年上の女性の家に下宿していた。はなは同学年の男の子との興味本位とも取れる恋の終始や、親に紹介された 将来まで見据えた新しい恋に浮かれるさまを手紙に書き綴り、今度はののがはなに今までの書簡を送る。別れの言葉と共に。
 二十年後、今度はメールで、ののははなと連絡を取った。はなは大使夫人としてアフリカ中西部のゾンダ共和国に駐留中。海を越えて、二十年の間を埋めるやりとりが始まった。漸く穏やかに相手を、自分を認め合えたのも束の間、ゾンダ国内で紛争が起きる。大使夫人としての勤めを果たすはな。その傍ら、はなはある決意をしていた。はなは出せなかった手紙を含め、全ての往復書簡をののに送る。…
               (出版社紹介文に付け足しました)

 しをんさんの小説は、もしかしたら私と相性いまイチなのかもしれない、と暫く手に取ることをやめていました。今回、予約図書がなかなか回ってこないことを切っ掛けに、じゃあ書架に並んでいるものを借りてみよう、と手に取った一冊。
 …面白かった。途中、何度も泣きそうになりました。
 登場人物の年齢設定がほぼ同年代だったのですが、このあたりを選んだことがまず秀逸。この時代ならではの設定ですね、通信手段の移り変わりを凄く巧く使ってる。手紙や授業中に回したメモ、家電話、連絡を取ってなかった間を設けることで携帯電話の普及期間をすり抜けて、メールに辿り着く。
 で、この高校時代の書簡のリアリティが凄い! メモ回したよなぁ、で、本当にこんな感じの 口調そのままの文章で書いてたよなぁ!! 『日出処の天子』のラストに「この終わり方?」と思ったし、そうそう、開明高校ってボクジュウって通称がついてるんですね、初めて知りました!(笑) 元素に運命の人を連想するような繊細さは、私にはありませんでしたけど(苦笑;)。
 私にとってのキラーワードも満載で、ののの「(男性を)あまり信用していないかもしれない」とか、はなの「(女のひとって)いろいろ注文をつけられ」「実際になにもいわれなかったとしても、どう思われてるのかなって、なんとなくびくびくしてしまう」とか、悦子さんの自分への始末の付け方とか、ずきずき響きました。
 いや、価値観があわないというか、首を傾げる箇所はいくつかあるんですよ、特にののが高校教師と関係を持つ辺りとか、ここまで突っ走らんでもよかろうに、と思ったし。
 でもやっぱり、東日本大震災(手紙の日付が近付くにつれどきどきしました)から阪神淡路大震災へ繋いで、最終的な結論が「あなたにふさわしい自分でありたい」ってのは泣きそうになりました。恋愛感情に関わらず、お互いがお互いを高めあって行く存在。相手を愛した自分を誇れるように。相手も、自分を自慢に思って貰えるように。
 はなさん、無事だといいな。おばあさんになってからでも、ののさんと再会して、会えなかった期間の話を喋り倒してほしい。
 為五郎も無事だといいな。