読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

徳の政治 小説フランス革命Ⅺ  佐藤賢一著  集英社  2013年

 エベールにつづき、デムーランとダントンも絶対絶命。
 独裁者の秘めた恋情。サン・ジュストの暗躍。
 ロベスピエール権力の頂点へ。                   (帯文より)

 一旦手を結んだかに見えたダントン、デムーランとロベスピエール。コルドリエ派のエベールと和解を目指すダントンに対し、ロベスピエールたちは更なる左派をもってエベール反撃を開始する。庶民層の支持を失ったエベールたちは蜂起にも失敗、告発を受け断頭台の露と消える。
 左派を失った議会は、右派のダントンの失脚も要求し始める。革命の最初からの同士であるダントン、デムーランを処分することに躊躇うロベスピエールを、サン・ジュストの暗躍が後押しする。
 ダントンとロベスピエールの会談も空しく、ダントン派は逮捕された。友情のためにも、ロベスピエールに自分たちを殺させてはならない。民衆に圧倒的な人気を保つダントン、デムーランの抗弁は裁判を圧倒するかに見えたが、デムーラン夫人リュシルが夫を助けようと金銭をかき集めたことまでが国家への反抗として取り上げられた。弁護禁止の措置を取り、偽の証拠をでっち上げるまでするサン・ジュスト。彼の剛腕は、ダントン、デムーランらの処刑を決定させた。…
 
 ダントンはともかく、一巻からずっと描かれていたデムーランの処刑は来るものがありました。元々ここら辺の知識はないので、デムーランがどういう最期を遂げたのか知りませんでしたし、この小説を読み始めてからは意識的に入れないようにもしていましたし。結果的に、ダントンの方がかなりいい男だった訳ですけれども。デムーランは愛すべき好人物、ですね。
 ロベスピエールに理想を見て、純粋であることを強要するサン・ジュスト。それを友人として反省して、幸福を手に入れさせようとしたダントンとデムーラン。護送馬車の上での会話は何だか泣きそうでした。
 それにしても、どこまで史実なんだろう。リュシルがロベスピエールに書いた手紙は多分本当にあるんだろうけど、で、リュシルが夫の助命嘆願のためロベスピエールに会ったことも本当だとは思うんだけど、実際ロベスピエールはリュシルに恋心を抱いていたんだろうか。叶わぬ恋をしていたんだろうか。
 馬車の上で「ロベスピエール、俺に続け」と叫ぶダントン、「僕らの処刑は終わりの始まりだったんだね」と哀しい理解するデムーラン。
 次巻が最終巻です。ロベスピエールの最期で終わりってことかな。よくこんなにきっちり予定通りに書けるなぁ、佐藤さん凄いよ。