読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

コイコワレ 乾ルカ著 中央公論新社 2019年

 「螺旋」プロジェクト昭和前期篇。

 太平洋戦争末期。敗色濃厚の気配の中、東京から東北の田舎へ集団疎開してきた小学生たち。青い目を持つ美しい少女、六年生の浜野清子もそのひとりだった。その目の色ゆえか、周りに溶け込めない孤独な彼女が出会ったのが、捨て子で疎開先の寺の養女、那須野リツ。野山を駆け巡る少年のような野性を持つリツも、その生い立ちと負けん気の強さから「山犬」と揶揄される孤独な少女だった。だが、それは「海」と「山」という絶対に相容れない宿命の出会い。理由もなくお互いを嫌悪するふたり。
 出征する青年のため、清子が持つお守りを欲したリツは、お守りを譲ってくれなかった清子に理不尽な怒りの感情を抱く。清子は、愛し尊敬する母が 心を込めて作ってくれたお守りを リツのために失うことになって、リツを許すことができない。
 だが、お互い「大切なもの」に対する価値観を通じて、血の呪縛に抗い、自らの未来を変えようとする。清子は感情を抑えて相手への態度を改め、リツは清子のためにお守りを手彫りした。漸くお守りが出来上がったのは、清子が東京へ帰る日だった。… (帯文に付け加えました)

 乾ルカさんの話は、アンソロジーで読んだことがあるくらいで、長編は初めてだと思います。
 面白かったです。この設定を凄く上手く利用してた。読書感想文に使えそうな感じ、昔懐かし正統なジュブナイル小説の系譜に連なるような、女の子の成長譚。
 予定調和みたいな雰囲気もあるかもしれませんが、でもやっぱり、清子とお母さんのエピソードとか読んでるといかにも正しい愛情に溢れていて、そりゃこのお母さん尊敬するよな、と納得したもんなぁ。
 スケール、という点ではこじんまりしてるかもしれませんが、その分まとまって読み易かったです。

 さて、次は朝井リョウさんですね。これは予約がまだまだ回って来そうにないんだよなぁ。