読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

望むのは 小谷田奈月著 新潮社 2017年

 連作短編集。
 ネタばれというか、思わせぶりな記述あります、すみません;

 十五歳。若い人間として生きられる、これが最後の一年だ。歳を取るのが怖い小春は、隣に越してきた同い年の歩くんと出会う。彼はバレエダンサーで、おまけにお母さんはゴリラなのだ! それっていったい、どういうこと――? 
 部活動、新しい友だち、恋にも似た心の揺れ。少し風変わりな世界で成長する少女の一年を描く長編。
                                          (紹介文より)

 一章 何もかもが新しい
隣の家に、同い年の男の子がやって来た。今までは両親と離れて暮らしていたのだが、この春から一緒に暮らすことになったのだという。自分が守らなけれが、と決意する小春。でも彼は、歩くんは小春に守られるような寄る辺ない存在ではなかった。

 二章 白日の下に躍り出る
帰宅部を選択した小春は、いつの間にやら担任の八木先生の使いっ走りをすることに。妙に居心地のいいこの空間、だが八木先生は小春に、美術部への入部を勧める。

 三章 ほうき星の、一方向の
小春に友達ができた。美術部の鮎ちゃん、でも歩くんは面白くない様子。小春と鮎ちゃんと二人だけで行く筈だった藍山への植物採集を兼ねたハイキングも、歩や同じクラスの相沢くんと行くことに。

 四章 夜より黒い
足を怪我した歩くんを見舞いに行って、小春は歩くんの秘めた恋心を知る。隣町にいた頃の同級生、誰もが好きになるようなクラスの中心人物。歩くんのお母さん、秋子さんも納得するような。

 五章 望むのは
卒業生の歓送会で、八木先生は歩くんとデュエットを踊りたい、と申し出る。その舞台に、相沢君はいとこを呼んだと言い始めた。歩の恋した相手を。当日、道に迷ったと連絡してきた相手を、小春は迎えに行く。…


 今から本当に、奥歯にモノの挟まった言い方しますからね。
 いや、相沢くん、もっと大きな特徴があるよね!?と思わず突っ込みたくなった五章(笑)。
 そもそも「秋子さんがゴリラ」との記述にまず戸惑ってはいたんですよ。「え、ゴリラみたいな人ってこと?」としっかり心に染み込んでないまま、美術の「里見先生がハクビシン」で漸く「そういう世界の話なのか…!」と呑み込みました。で、最後ですよ。
 …古谷田さん、相変わらず心がざわつく話書く人だよ;
 四章でこう来たか、成程、と思ってたら五章でさらに上を行く展開。いやでも、秋子さんとにかく魅力的! 小春と二人での帰り道での会話は何て素敵な、と心が温かくなりました。で、それが「そういう伏線だったのかよ!」と思わず声を上げたくなるような感じになるし。
 偏見を持つ、ということのレベルを別次元まで持って行く力技でした。…これ、紹介文や帯文で手に取った人は戸惑うと思うな。でも難しいよな、この作品の魅力ってネタばれに基づいちゃうもんなぁ。