読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

春期限定いちごタルト事件 米澤穂信著 創元推理文庫 2004年

連作短編集。

小鳩君と小佐内さんは、恋愛関係にも依存関係にもないが互恵関係にある高校一年生。きょうも二人は手に手を取って清く慎ましい小市民を目指す。それなのに、二人の前には頻繁に謎が現れる。名探偵面などして目立ちたくないのに、なぜか謎を解く必要に迫られてしまう小鳩君は、果たしてあの小市民の星を掴み取ることができるのか?
新鋭が放つライトな探偵物語、文庫書き下ろし。 (裏表紙紹介文より)

 羊の着ぐるみ
 小佐内ゆきさんとは、中学三年の初夏から一緒にいる。小柄でおとなしく振舞っている甘味女王。一緒に船戸高校に合格して通い始めた4月の放課後、小鳩常悟朗は小学校時代の同級生 堂島健吾から、捜し物を手伝って欲しいと要請された。失くなったのは吉口という女子生徒のポシェット。やはり健吾が声をかけた男子生徒数名と共に、校舎の中を探し回る。

 For your eyes only
 小佐内さんが自転車を盗まれた。春期限定いちごタルト最後の二つと共に、ちょっとコンビニの前に停めていた隙に。
 一方、小鳩は新聞部に入った健吾に、美術部に連れて行かれた。曰く、2年前に卒業してしまった先輩が在校時に残した二枚の絵、その処理に困っているとのこと。絵の真価を知りたいという言葉に、小鳩は一つの可能性を示す。

 おいしいココアの作り方
 小佐内さんの自転車が、泥棒の逃走手段に使われていたらしい。落ち込む小佐内さんと街中で会った小鳩は、流れで健吾の家に招かれることに。そこでもてなしに出された「おいしいココア」は、堂島家の台所の現状では作り出せない筈のものだった。首を傾げる健吾の姉・知里と共に、小鳩はその作り方を考えつく。

 はらふくるるわざ
 理科Ⅰの試験の後、ケーキバイキングを食べながら、小佐内さんは小鳩に、試験中に起きた出来事を話す。何でも栄養ドリンクの空き瓶が、教室の後ろのロッカーから落ちて割れたのだとか。どうして瓶が落ちて割れたのか、何か目的があったのか。忘れた携帯電話を学校に取りに戻りがてら、小鳩は理由を確認しに行く。

 孤狼の心
 小佐内さんの自転車が見つかった。バス道の途中に放置してあったらしい。壊れた自転車を目の前に、小佐内さんは静かな怒りに満ちている。中途半端な位置に放り出してあった自転車は何を意味するのか。復讐心に満ちた小佐内さんの暴走を止めるべく、小鳩は健吾と走り回る。…

 私は米澤さんの作品は『満願』から入ったので、こういうキャラクターメインの学園ライトミステリーには未だに違和感があるなぁ(笑)。
 中学の頃、小鳩君は小賢しさ、小佐内さんは執念深さで手酷い目にあったらしく、高校デビューで心機一転を図る二人。でも田舎の高校で過去を帳消し、ってのはどうしても難しい気がするんですけどね、同じ中学から入ってきた子も、同じ習い事に通ってました、って子もいるだろうし。
 小佐内さん、あの年でファッションも色々なパターン取り揃えて持ってますねぇ。金銭的には結構裕福な家庭なのかな、とは思いました、自転車もすぐ買って貰えてるようだし、各種スイーツも楽しんでるし。限定のいちごタルト、盗まれてどうなったのか、そのまま捨てられてるとかしたらやりきれないなぁ。
 ちょっとずつ引っ張っていた自転車盗難騒ぎを最後に繋げた手腕は流石、中学の頃の小鳩君たちにどんな過去があったのか、いずれ明かされるんでしょうか。小佐内さん、あれで不良だったりしたのかなぁ。でも進学校入学してるんですよね。
 次巻(なのかな?)に続きます。