読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

魔空の森ヘックスウッド ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著 駒沢敏器訳 小学館

ネタばれあります、すみません
 病気で部屋で寝ていたアンは、隣りの農場に次々と見知らぬ人が入って行くのを見る。だが、一人として出てこない。不審に思ったアンは熱が下がってから、その農場につながる森に様子を見に入る。そこで出会ったのは妙に未来的な箱から出てきた骸骨のような男・モーディアン(でも笑顔は最高に魅力的!)。アンとモーディアンの血から創られた少年・ヒュームや銀色のボディを持つヤマハ製ロボット・ヤムとともに、時間も空間も、記憶さえ混乱した不可思議な場に彼女たちは巻き込まれて行く。
 …これはファンタジーと言うよりSFじゃないのかしらん? ファンタジーとした方が売れ行きいいんだろうけど。
 装丁がまずキレイ。小学館は挿画を佐伯美保さんに頼まないんだね、それは少々残念ですが。
 一回目読んでいる途中で「…もう一回読み直した方がいいだろうな」と思いました。何しろ時間系列が前後バラバラ、「ポーの一族」なみにややこしい(笑)。最後に全ての謎や正体が明らかになってハッピーエンドってのはD・W・ジョーンズ節健在、って感じで好きですね。
 今回不思議に思ったのは、この本がどの層を狙って書いたんだろうってこと。子供向けって言うにはモーディオンの生い立ちとかヴィエランの受けた命令とかちょっとハード。翻訳家さん大変だったろうなぁ。徳間書店から出てる一連の作品は、最初っからハッピーエンドですよ~、って雰囲気がありあり出てるから、明るく訳せばまぁいいと思うけど、この作品はなぁ…; でも、不用意に森に入って行った人達が次々と場に捕らわれていくどたばたぶりは、いかにもユーモアたっぷりで可笑しいんですよね。(余談ですが、「ハウルの動く城」も妙に深刻ぶらず、ただただ明るく楽しい活劇動画にして欲しかったな、というのが私の感想)
 どの層を狙ったのかと言うのにも関わってくると思うのですが、翻訳家さんの言葉の選び方が私には疑問でした。キャメルのコートがアイテムの一つで出てくるのですが、キャメル=らくだであることがわかってないと理解できない文章になっている。この頃の小学生にはこの位の英語は一般常識なのかしらん? アウトローと言う単語は何故そのまま出てくるのか、「無法者」や「はみだし者」ではいけないのか。フリントは「石英」ではだめなのか、サドルはどうして「鞍」ではないのか、ヘルメットは、ポータルは。ヤムの言葉使いに統一感がないのはわざとなのか? …内容に直接関係のない所で妙に引っかかった一冊でした。