読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

人形の家 ルーマー・ゴッデン作/瀬田貞二訳 岩波少年文庫 1978年

 イギリスでの出版は1947年。

 小さなオランダ人形のトチーは,「人形の家」に,両親と弟のりんごちゃん,犬のかがりと幸せに暮らしていました.ところがある日,ごうまんなマーチペーンが入りこんできて,思いがけない事件がおこります…。
 真実という大切な問題を人形の家にたくした,美しい物語。
                                (表紙折り返しの紹介文より)

 宮部さんの特集冊子『宮部みゆき全一冊』で紹介されていて、いずれ読もうと思っていた一冊。いつもは気になった本の題名はメモっとくよう心掛けてるんですが、今回それをしてなくてですね、かろうじて覚えてたのがこの作品だけだったという…; また借りてチェックしなおさなきゃなぁ;;

 ルーマー・ゴッデンというと、かなり前に『バレエ・ダンサー』を読んで、それが異様に面白かった覚えがあったのですが、今回「え、本当に同じ作者??」と読後 ネットで確認するほど驚きました。いや、何か、全然系統違うじゃん!
 それぞれ手をかけて、この家の女の子たちに大切にされてきた人形たち。お父さん、お母さん、娘と息子、飼い犬という役割を振られ、念願だった人形の家にも漸く住めるようになって、幸せの絶頂にあったのに、そこにマーチペーンが現れます。子ヤギ皮と瀬戸物でできたマーチペーン、本物のレースで作られた真っ白な花嫁衣裳を着た人形。遊ぶためではなく、鑑賞用に作られた贅沢なそれは、すっかり傲慢な性格になって、人形の家を奪ってしまいます。
 ぼろぼろだった人形の家を、丁寧に修復していく過程が凄く楽しかった。それを知っている人形たちと、当たり前のように享受するマーチペーン。
 勿論マーチペーンにその家を割り当てたのは、その家の女の子の一人なんですが、そしておこる殺人事件(になるのかな?)。ハッピーエンドなのかもしれないんだけど、ほろ苦いエンディング。
 あくまで人形たちの間で起きることなので、この話が受け入れられるかどうかは人に因るかも。

 翻訳が瀬田貞二さんで、意地でも日本語にしてやる!という訳文は相変わらず。この表現は今なら何に当たるのかな、と推測するのが、妙に楽しかったなぁ。マーチペーンは多分ビスキュイドールだし、「つぎはぎ細工のふとん」はきっとパッチワークのことですよね。
 こういう作品の新訳が出たら、ちょっと比較してみたいかも。原書を当たる語学力はないので;;