読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

雲のはて フランバーズ屋敷の人びと2  K.M.ペイトン著/掛川恭子訳  岩波少年文庫  1981年

 シリーズ二巻目。クリスチナ17~19歳まで、1913年から1915年までの出来事。
 英国での初出は1969年。
 ネタばれと言うか、あらすじほとんど書いてます、すみません;

 ウィリアムと駆け落ちしたクリスチナ。フランバーズ屋敷に行くまで一緒に暮らしていた、バタシーのグレイスおばを訪ねる。仕事に就いてクリスチナを迎えに来る、と言うウィル。だが希望する飛行機に関する仕事に就くには、コネもなく、片足の不自由なウィルには難しかった。あちらこちらを断られた末、アダムの飛行学校での長時間労働でくたびれていたパイロット・サンディの代わりに半ば強引に飛行機に乗り込み、整備士の職を得る。
 金持ちを乗せて操縦を教えるための飛行機を整備するウィル。生徒の一人・ドロシーの伝手で、彼女の父親の経営するキングストンのホテルで、クリスチナは働くことになる。
 金を貯めて自分の飛行機を作る、と夢を語るウィル。父親よりも慕っていたダーモットさんが死に、ウィルに試作飛行機エマ号を残したことから、その夢はにわかに現実味を帯びて来た。再び飛行機に乗るようになって、ウィルは自分の曲がらない足が飛行機の操縦の障害になることに気付く。ウィルはクリスチナに何も言わないまま、足を治してくれるかもしれない、と言われたスイスの医者の元に飛び立つ。
 4ヶ月後、治療費と言う借金を抱えてウィルは帰って来た。曲がるようになった足で、パイロットとして生徒を教え、競技会に出て賞金を狙い、やがて曲技飛行で金を稼ぐようになる。ウィルの名声は高まって行くが、クリスチナの心労は絶えない。だがウィルには、空を飛ぶことを怖れ嫌がる人間がいるとは思いもよらないことだった。ウィルに嫌われたくないばかりに、クリスチナは無理をして一緒に空を飛び、ウィルが飛んでいる間もまるで心配していない振りをしなくてはならなかった。
 結婚を許さなかったラッセルが死に、ウィルはクリスチナとの結婚を決める。だが同時に、軍隊に入ることも決意していた。…

 話よりもまず、翻訳がある意味新鮮で。「きちがいじみた」スピード、「つんぼになるかと思った」轟音、「びっこをひいた」足。この頃はまだこう言う表現、大丈夫だったのね~(苦笑;)。今の子、この言葉が意味すること分かるかしら。
 『赤毛のアン』シリーズとほぼ同年代の話だったんですね、シリーズ最終話『アンの娘リラ』が第一次世界大戦を背景にしてましたよね。あれもイギリス系の話なのに、どうしてこの作品食べ物が美味しそうじゃないんだ、ミートパイとサンドイッチしか出てこないぞ! でも紅茶は出てくるんですよね、さすがイギリス(笑)。
 「飛行機」と言う時代の最先端を行く物に魅入られるウィル、怪我をしても親友が死んでも恐れない。そんなウィルに惹かれながらも不安でたまらないクリスチナ。何か妙に気持ちが分かりました。以前スキューバダイビングを体験したことがあります。海の底は綺麗で魅力的だったのですが、何しろ空気のない世界、心の底にしんしんと恐怖が立ち込めて、怖がりの私には残念なことに芯から楽しいと思えなかった。クリスチナが空を飛ぶ時に感じる爽快感、でも常に恐怖が付きまとう感じ、何だか分かるなぁ(←一緒にするなって?・苦笑;)。
 さて、次でクリスチナはまたフランバーズ屋敷に戻る筈。いよいよ『風と共に去りぬ』の世界になるんでしょうか。…時代が違うけど。