読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

創竜伝 2 〈摩天楼の四兄弟(ドラゴン)〉 田中芳樹著 講談社ノベルス 1988年

 シリーズ第2巻。

 夏休み、竜堂兄弟は遊園地フェアリーランドで襲われ、東京湾で襲われ、翌日には野球場ビッグボウルと自宅で襲われて、その全てを返り討ちにした。新たな襲撃者の後ろには、アメリカ四つの超巨大財閥 四人姉妹がいるらしい。
 鎌倉の御前 船津忠厳がいなくなったことで、抑えの亡くなった小物政治家は勿論、米国の巨大組織まで竜堂兄弟を狙い始めたようだ。
 四人姉妹の先兵 レディLことパトリシア・S・ランズデールは、鳥羽叔父を篭絡し、四兄弟との会食の場を設け、続の身を他の三人から引き離す。筋肉弛緩剤を飲まされた続は火竜に変身し、都庁を火の海に。始は続を人身に戻すべく、都庁を駆け上がる。…

 いたなぁ、レディL! すっかり忘れてたよ! 旧日本軍の被害者の子孫! 細菌部隊の生き残り 田母沢博士も2巻から登場。
 味方で言えば、虹川耕平刑事と蜃海三郎記者もここからでした。…こんなに早かったんだなぁ。
 あとがきがわりの座談会もこの巻から、これが楽しみだったんだよなぁ。「論文書いても女の子からファンレター来ない」ってのは名言だと思います(笑)。
 さて、次はレディLの再戦ですね。次巻に続きます。

創竜伝 1 〈超能力四兄弟(ドラゴン)〉 田中芳樹著 講談社ノベルス 1987年

 『創竜伝』シリーズ1巻目。
 ネタばれあります、すみません。

 20世紀も終わりを告げる頃。東京都中野区に建つ竜堂邸には 23歳の長男 始を筆頭に、続 終 余の4兄弟が住んでいた。
 彼らの祖父は自由闊達な校風で知られる共和学院の創設者。始はここの卒業生で、高等部の世界史教諭であり、最年少理事でもある。続 終 余もこの学院のそれぞれ大学部 高等部 中学部に在学している。
 祖父が亡くなってから、竜堂兄弟の周囲に不穏な空気が立ち込める。叔父 鳥羽靖一郎は始を学院から追い出そうとしている様子、その裏には保守党の大物代議士の陰がちらつく。さらに最奥には謎の老人「鎌倉の御前」こと船津忠厳の姿があった。船津は四兄弟の祖父 竜堂司と共に、日中戦争時、黄河上流域にある小さな村 竜泉郷に辿り着いたらしい。そして、始たちを転生した竜王と呼ぶ。
 彼自身、竜泉郷の娘を殺して血を啜ったことで、頑強な肉体を手に入れていた。竜種の力を手に入れようと、船津は鳥羽一家を人質に取り、四兄弟を自衛隊演習場に誘き出す。砲弾が降り注ぐ中、余は黒竜に変身した。…

 このシリーズ、昨年末、とうとう最終巻が出たそうで。
 結末は気になるものの、さて、何巻まで読んでたっけ、お話もかなりうろ覚え、とすると最初から読まなきゃいけないのか…?とかなり二の足を踏んでました。
 ええい、と気合入れて一巻から総おさらいすることに。付き合いますよ、これも青春の始末だ。

 案外内容覚えてたんで驚きました。一巻でかなりネタばれ、というか目的地は示されていたんですね。当時の政治への批判や歴史知識も懐かしく、この辺りは『薬師寺涼子』へ引き継がれている感じ。
 読んでて結構引いている(笑)自分もいて、これは昨今出版されてる小説の、表現が随分おとなしくなってるせいなんだろうな、と思ったり。
 さて、カウントダウンは始まりました。15巻まで行くぞ!

きのう何食べた? 12~14巻 よしながふみ著 講談社モーニングKC

 シロさんのゲイって、ちょっと察しのいい人…というか観察力の鋭い人ならすぐばれてしまうレベルの隠れ方だったのか!と驚いた12巻。
 シロさんの勤める法律事務所に新しい事務担当の女性が入り、その方からの情報で料理のレパートリーも増えてってます。好き嫌いって幼少期の食生活にも関係しますよね、「この方法では食べられるかな」と工夫してくれる人に出会わなければ、「不味い、食べない」の固定観念が固まっちゃう。好き嫌いのないシロさん、お母さんが工夫して食べさせてくれてたんでしょうね。
 玉ねぎと中華スープが合わない、ってのは私もついこの間体験しました。袋ラーメンの具に入れたら、甘みでスープの味が台無しになっちゃったんでした;;

 佳代子さんのお孫さんも大きくなって、訪問頻度が以前より少なくなって、シロさんとの会合もまた増えて来るのかな。35歳くらいから精神年齢が止まってる、ってのは私も大きく頷いてしまいましたよ;
 14巻くらいからシロさんの頬っぺたにほうれい線の始まりのような点が描かれるようになってます…よね?? ちゃんと老けて行ってるんだよなぁ、凄いなぁ。大ボスからシロさんへの担当の引継ぎも始まったし、ケンジも店長になってしまいました。…大変だ(笑)。

 そうそう、アールグレイのミルクティシャーベットを作ってみたんですが、練乳一本入れる勇気がどうしても出ず; 半分くらいで止めてしまいました;;
 これはこれ、あっさり味で食べられたんですが、お菓子関係は砂糖やバターの量でひるむよなぁ;

安西正弘さん

 ネットで訃報を知りました。…続くなあ;;

 紹介文はほぼ「『うる星やつら』竜之介の父」。
 そうですよね、私の頭の中にも「海が好き――――――!!!」の声が響いてます。
 『おーい! はに丸』にも出てらっしゃったとのこと、田中真弓さんとの共演が多くてらっしゃったんですね。

 まだお若いのに。
 ご冥福をお祈り致します。

櫻子さんの足下には死体が埋まっている 狼の時間 太田紫織著 KADOKAWA 2016年

 シリーズ9冊目。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 第壱骨 狼の時間
 夏。正太郎の元に差出人不明の写真が届く。写っていたのは愛犬ウルフの無残な姿。花房の仕業と思い込む正太郎に、櫻子さんは違うと告げる。正太郎は櫻子の叔父の助手 青葉を花房の正体として怪しむが、櫻子はそれも否定。そんな折、花房らしき人物Phantomから、「ある娘を死から救って欲しい」とメールが届く。Phantomに誘導されて、正太郎は自殺志願者たちと共に行動することに。
 伯父伯母から虐められているというなずなさん、ロリータファッションに身を包んだみかりんこさん、小柄な高校一年生香澄ちゃん、奥さんにいきなり離婚を言い渡されたこーへーさん、片足を怪我している様子の隼さん。この中の誰が「ある娘」なのか、しかも殺人者も含まれているとPhantomは伝えて来た。正太郎はPhantomの指示に従い、皆を廃屋へ案内する。一人ひとり、思い止まるよう説得する正太郎。櫻子さんとも合流できて、何とか成功したかに見えたが、なずなとだけ連絡が取れなくなってしまった。なずなは新たな自殺志願者を見つけていた。

 第弐骨 午前四時のノック
 内海巡査が新しい引っ越し先を探している。正太郎の母親が扱っている部屋が丁度一つ空いていて、格安で案内することに。何故ならそこはいわゆる事故物件だったから。怯える内海巡査。しかも午前四時頃、誰もいない部屋からノックの音がしてくるという。試しに一緒に泊まり込んだ正太郎も、その音を聞いた。櫻子さんは、死者は壁を叩いたりしない、と相手にしない。はたして真相は。…

 正太郎くんのあまりにも無謀な行動に驚いた一遍(苦笑;)。いやいや駄目でしょ、そんな口車に乗っちゃあ!? 言い方は悪いんですが、正太郎君が助かることは自明なのでハラハラはなく、ただただ「何だこの考えなしの行動は??」ばかりが目に付いてしまいまして;
 助けるよう指示された女の子ははっきりしてませんよね? 次の巻に続くのかな。
 『午前四時のノック』の方はきれいな解決でした。余韻は残りましたけど(笑)。

大塚康生さん

 ネットで訃報を知りました。
 アニメアワードフェスティバル2021の授賞式にて ジブリ鈴木敏夫プロデューサーが言及されたそうで、…何で?とちょっと引っかかりつつ。遺族の方に発表の許可は取られたんでしょうけど。

 ほんの小さい頃、製作者だの原作者だの、作り手を意識して見るなんて知らなかった頃から。
 面白い、面白いと夢中になって見ているアニメ作品に、どうも共通項がある。そういえばあのアニメもこのアニメも絵柄が似ている、もっと言えば動きにも似た所がある。あれ、どこにもあのお名前があるな、じゃああの作品もそうなんじゃないかな、やっぱりそうだ、とまさに繋がり、広がっていく世界。
 手塚治虫石ノ森章太郎といった漫画家、原作者ではなく、アニメーターを意識する切っ掛けになったお一人です。
 「東映まんがまつり」にオリジナル作品があったころを知っている者としては、寂しい限り。唯一無二の職人さんを喪ってしまいました。

 ご冥福をお祈り致します。

64(ロクヨン) 横山秀夫著 文藝春秋 2012年

 2013年国内ミステリベストテン2冠、2016年日本人初の英国推理作家協会(CWA)のインターナショナル・ダガー賞候補作。
 ネタばれあります、すみません;

 主人公は一人娘が失踪中のD県警広報官・三上義信。妻は何回か掛かって来た無言電話に一縷の望みをかける状態、三上は娘の捜索のために警務部上層部に借りを作ってしまい、広報官と言いながら、上からの命令を誰何もせずただ垂れ流すに陥っていた。悪しき慣習を改め 信頼を築きかけていた記者クラブとの関係も悪化、交通事故の匿名問題で揉める中、昭和64年に起きたD県警史上最悪の翔子ちゃん誘拐殺人事件(ロクヨン)への警察庁長官視察が決定される。
 セッティングを命令され、被害者遺族 雨宮への慰問を打診する三上。だが、雨宮は長官の慰問を拒絶する。その理由を探るうち、三上は「幸田メモ」というキーワードに突き当たる。それはロクヨン事件で犯してしまった捜査ミスに関する報告書だった。刑事部長は8代に渡り、ミスを隠蔽していたらしい。
 刑事部からは「元刑事」と揶揄られ猛反発をくらい、記者クラブは長官視察をボイコットすると宣言されてしまう板挟みの状況。刑事部と警務部の全面戦争、その狭間で三上は、長官視察の本当の目的を知る。本当の目的――刑事部長を本庁から出す、叩き上げ最高位を県警から奪う、その宣言。
 折も折、ロクヨン事件をそのままなぞるような誘拐事件が発生する。今更 同一犯の犯行か、模倣犯の仕業か。報道協定を要請しながらも情報を出さない刑事部に、記者クラブは暴動寸前。三上は現場に乗り込み、指揮車に同乗して部下に状況を送る。現場が何かを隠している様子を不審に思いながら。それは、被害者遺族の決死の提示だった。…

 発刊当時、話題になったのは覚えてたんですが、何だかんだ読み損ね、今更ですが読んでみました。
 …面白かった。
 読み始めはどうしようかというくらい辛かったです。不本意で板挟みで、仕事のみならず家庭も問題山積で、しんどくて読み飛ばそうかと思ったほど。何とか状況を改善しようとしてるのに、同期の二渡が先回りしてて相手の警戒心をMAXまで上げてるし。刑事部も警務部も、内部で揉めててもそれを表にまで出すなよ、一般の会社でそれやったら「信用できない」って取引打ち切られても仕方がないぞ;
 三上だけではなく、ミスを犯した日吉も、告白しようとした幸田も、監視役として飼い殺しにされてる柿沼も、誰より誘拐被害者の遺族雨宮も、とにかくやりきれない。…と思ってたら、最後にどんでん返しが来ました。
 そこに繋がるかぁ。村串とか美雲とか、銘川、目崎と変わった名前が続くなぁとは思ってたんですが。同時に、雨宮の努力がとにかく哀しい。警察が当てにできないことは、分かってしまっているし。
 ハッピーエンドではないのかな、三上の娘さんは見つかってないし。母親が芸能人レベルの美人ゆえのコンプレックス、とか胸に痛かったです。奥さんは何とか心に折り合いつけたみたいだけど。
 作者は地方新聞の記者出身でしたよね、警察広報との攻防も迫力満点で、こういう雰囲気なんだろうな、と知らないながらリアリティを感じました。でも個人的には、こんな職場勤めたくないな~、広報も記者も;