読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

文藝別冊 [総特集]森見登美彦 作家は机上で冒険する! 河出書房新社 2019年

太陽の塔』『夜は短し歩けよ乙女』『有頂天家族』そして最新作『熱帯』――
唯一無二の小説世界を築き上げてきた森見登美彦、初の総特集!
デビュー15年、創作の秘密に迫る永久保存版。

キュートなSFあり、怪談ありのバラエティ豊かな短篇3作をはじめ、著者本人による全小説解説エッセイ、カラーグラビアで見る森見登美彦の仕事場、5万字にわたるインタビュー、事典、年譜等の資料も大充実、全ファン必読の一冊です。                          (内容紹介より)

 単行本未収録作品三本収録。

 大草原の小さな家
新しい家に引っ越してきた麦子、森を拓いてできたばかりの住宅地には時々「みみしっぽ」が出る。麦子はみみしっぽの赤ちゃんがほしくて仕方がないが、みみしっぽたちは遠くに行くらしい。

 聖なる自動販売機の冒険
隣のビルの屋上にあった自動販売機が、何故かこちらのビルの屋上にある。「私」が戸惑っていると、隣のビルに勤めているらしい女性が、屋上越しに絡んで来た。どうやら酔っ払っているらしい。

 金魚鉢をのぞく子ども
高校時代の友人が京都に住んでいるので、盆休みを使って訪ねることにした。
大学を中退してとある陶芸家に弟子入りしたとのこと、所があってみると人が変わったかのように話があわない。ぎこちない空気のまま、酒を飲む二人。得体のしれないけものが走り回り、鮮やかな浴衣を着た女の子の姿がちらつく。…


 森見登美彦氏ムック本。
 森見さんの構成する成分、作品の中に登場するあれこれもちらちらと垣間見られて、嬉しい限り。もちぐまって本当にあったんだ…!
 小さい頃森見さんが読んでた本、ってのは結構被ってたりするんだけど、どうして私はこういう発想のできる人になれなかったのかなぁ(笑)。
 恩田陸さんとの対談にあった「出し惜しみはしちゃいかん」って言葉は、作家志望の人に響いたんじゃないかしら。お二人とももがいてらっしゃるんですね。楽しませて貰ってます、すみません;
 他の方の森見登美彦評、ってのも面白かったです。千野帽子さんの「読者のツッコミ待ちの文章」とか「限りなく自己防衛的なのにぜんぜん防衛しきれてない語り」ってのは、確かに、と頷くことしきりでした。
 で、圧巻(?)だったのは盟友・明石氏との対談! というか、「もしかして明石?」って言われることがある、ってそれだけで「えええ―――!?」って思わず電車の中で前のめりになりました。どれだけ個性的な人なんだ!?(笑) 今は弁護士になってらっしゃるとのこと、やっぱり頭のいい人は違うんだねぇ。
 書店員さんの座談会、『きつねのはなし』で「違う話の引き出しもあるんだ」と安心した、ってのは私も激しく同意。当時、同じことを思いましたね。
 「森見登美彦のあゆみ 妄想略年譜つき!」にあった「テレビアニメ『有頂天家族』放送。しかし、放送が終了してもDVD化されても原作の続編が完成せず、ビジネスチャンスを大いに逃す」の一文に思わず吹き出しました。…これ、出版社の人が一番思ってるだろうなぁ(苦笑;)。
 萩尾望都さんの寄稿漫画もあって、何と贅沢なこと! 森見さんがみんなに愛されていることが十分実感できましたよ。いや、楽しかったです。