読書家にして稀代の竹林愛好家として知られる森見登美彦が、今いちばん読みたいテーマで、いちばん読みたい作家たちに「お願い」して、奇跡のようなアンソロジーができました。そりゃあ、「美女と竹林」がテーマになるでしょう!
読みまどい、辿りつけ。きっとあるはずだ。竹林(と美女)の理想郷が。十人の人気作家による「美女と竹林」モチーフの新作短編集。
(内容紹介より)
来たりて取れ 阿川せんり
北海道に竹林はない。同棲中のカノジョ 月子ちゃんが竹の商品開発の研究のため、京都に転勤になる。遠距離恋愛はこりごり、という彼女に自分はついていくのか、だけどそれにはかなりの思い切りがいる。…ってんで何故か「私」は東京にいた。東京でパンダを見るのだ、でもそこであったのは思いっきりタイプの女子高生。何だかんだでお昼をご馳走する羽目に。
竹やぶバーニング 伊坂幸太郎
仙台七夕祭りの竹に、かぐや姫が混入したらしい。青竹ファームの社長からの依頼を受けて、僕はホストの友人とかぐや姫を探しまわる。何しろ彼には「美女ビジョン」、遠くからでも美女を見つけ出すという特技があったから。「光る竹を見た」とのSNSを頼りに、アーケード通りを右往左往する。
細長い竹林 北野勇作
駅前の喫茶店へ行こうとして、近道かと思われた細い路地に入ってみた。そして竹林に迷い込んでしまう。そこからさらに商店街のアーケードへ、見覚えのある筈の道へ…。
美女れ竹林 恩田陸
小さい頃の思い出。近所に住んでいたKちゃんの家は材木商で、その裏山は竹林だった。彼女は竹林に入っては駄目だという、何故なら「怖いおばさんがいるから」。
東京猫大学 飴村行
東京猫大学にて、学長の新入生入学挨拶。
永日小品 森見登美彦
中学二年のころ、正月に帰省していた祖父母の家にて。生意気盛りの僕は親戚のどんちゃん騒ぎに飽きて、幼い頃よく遊んだ裏の竹林へ。そこで出会った女の子は、家のご馳走をたいらげてみるみる大きくなった。
竹迷宮 有栖川有栖
大学時代の友人を訪ねて田舎へ。大作ミステリをものするため引き籠った彼は、夜中、「私」を竹林へ案内する。光る竹が生え、望みのものが出て来る竹林へ。
竹取り 京極夏彦
隠遁生活を送る友人を訪ねた。父親の借金を背負って一文無し、職も失った「私」は、恋人を労咳で亡くした彼が、しきりに窓の外を気にしている様子が気になる。
竹林の奥 佐藤哲也
SNSの美女の行方を捜すため、竹のネットワークを使ってしまった崩壊の顛末。
美女と竹林 矢部蒿
押し入り強盗に育てられた少女は、父親の身代わりに竹林の中の家で暮らすことになる。…
森見さんがお題を出した短編集。成程、「美女と竹林」(笑)。
面白かったです。全然今まで読んだことない人から懐かしい名前、お馴染みの名前まで。
ホラーテイストが多い中、阿川さんの「来たりて取れ」はなかなか明るくて前向きで楽しかったなぁ。あっけらかんと同性カップル出て来るし、恋愛感情の機微の解説にはちょっと納得してしまった(笑)。
伊坂さんの「竹やぶバーニング」も好きです、もう本当、個性炸裂。シリーズ化してくれないかなぁ、これ。綺麗にオチはついてるんですけど。
有栖川さんと京極さんの作品は、骨子は似てるのにやっぱりテイストが違う。妙にユーモラスな有栖川さんと、幽玄な京極さん。駄洒落が出てきた段階で「有栖川さ~ん;」と思いましたよ(苦笑;)、
矢部さんの作品は初めて読みましたが、サイコパスと言うかスプラッタと言うかから始まって、「美女と野獣」的な童話に落ち着くという。…そうか、童話って残酷だったり不条理だったりするもんなぁ。
色々読めて楽しかったです。