読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

水晶宮の死神 田中芳樹著 東京創元社 2017年

 「ヴィクトリア朝怪奇冒険譚(ヴィクトリアン・ホラー・アドベンチャー)」三部作最終巻。
 ネタばれになるのかな、すみません;

 十一月のある晴れた休日、ニーダムは姪のメープルと共に、ロンドン郊外のシドナムにある水晶宮クリスタルパレス)を訪れる。そこには、世界中の美術品や植物をはじめ、異国情緒あふれる珍しいものが展示されていた。
 人々でごった返す、きらびやかなガラスの宮殿に、突如大きな悲鳴が響き渡った。袋づめの首なし死体がどこからともなく降って来たのだ。死体の手に握りしめられていたボロ布には、「死神(デス)」という赤い文字。外では暴風雨が吹き荒れ、人々は水晶宮に閉じ込められてしまう。混乱する人々の前に、カラスの仮面をつけた黒ずくめの男が姿を現わす。それは、おぞましいショーの始まりだった……。
                                     (表紙折り返し文より)

 三部作、といいながら前作二作の内容をすっかり忘れておりまして;(←こらこら;)
 とりあえず主人公がクリミア戦争帰りだったとか、姪っ子と一緒に貸本屋に勤めてたとか、当時の有名小説家やらが出て来てたなぁとか、設定だけは何とか覚えてたんですけど。
 出てきた有名人はディケンズ、イェイツ、テニスンルイス・キャロルナイチンゲール等々。実在の政治家なんかも登場してたようです。(それを判断する知識は私にはない)
 特筆すべきはジェームズ・モリアーティでしょうねぇ。だとしたらこの世界にはシャーロック・ホームズもいることになるんだろうか、ちょっと出て来てほしかったかも。
 物語としての面白さというか、当時のイギリスの事件や風習、社会情勢を教えて頂く、というスタンスで読みました。フランスに負けず劣らず、この頃のイギリスは衛生面に問題があったようで…いや、ヨーロッパ全体がこんな感じだったのかな。
 ニーダムもメープルも生涯独身で楽しく穏やかに過ごした様子、いかにも田中さんらしいエンディング。恋愛沙汰には今イチ縁がなく、それを至上としないのよね(苦笑;)。