読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

月蝕島の魔物 田中芳樹著 理論社 2007年

 舞台は1857年、ヴィクトリア朝のイギリス。
 クリミア戦争の帰還兵エドモンド・ニーダムは、姪のメープル・コンウェイと共に会員制貸本屋ミューザー良書倶楽部に就職した。出版社や作家にも上得意として顔が利く社長ロバート・ミューザーの指示で、当代の人気作家チャールズ・ディケンズと、彼の家に滞在しているハンス・クリスチァン・アンデルセンの接待旅行を言いつかる。当時北極探検に出たきり戻ってこないフランクリン大佐の、捜索支援の旅だった筈なのに、いつの間にやら今話題の、氷山に閉じ込められた帆船・無敵艦隊を見に行くことに。
 氷山が着いているのは月蝕島と呼ばれるゴードン大佐の領地。悪辣非道な領主は悪政を敷き、農民から土地を奪い取っているらしい。封鎖状態にある月蝕島に、地元新聞の記者マクミランの案内でようやく辿り着いた4人だが、ゴードン大佐とその次男クリストルに、不法侵入だとして捕まってしまう。
 絶体絶命の危機の中、帆船を凍てつかせた怪物まで放たれる。ゴードン家で働いていたメアリー・ベイカー、ゴードン家の行方不明の長男ラルフ。メープルたちを守るため、エドモンドの大立ち回りが始まる。…

 これは『エマ』と同じ時代の話なんですね~。貸本屋とか水晶宮クリスタルパレス)とか、出てくる名称が何だか嬉しい。
 話としては『ドラよけお涼』や『夏の魔術』と同じパターン。この時代の蘊蓄を入れつつ(多少横道に逸れつつ・笑)、まぁこんな話よね、ってんでつるつる読めました。
 落ち込んでるアンデルセンへのディケンズの台詞「きみの名前と作品は不滅だ。だが、書評なんてものは、一週間もたてば、おぼえているやつなんていやしない」は確かに名言。田中さん、座右の銘にしてるんでしょうね(笑)。
 三部作の第一作だそうですが、続きはちゃんと出るんでしょうか。田中さん、子供が子供であるうちに出して下さいね。