読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

魔法少女はなぜ世界を救えなかったのか? ペク・ソルフィ ホン・スミン著/渡辺麻土香訳 晶文社 2023年

  韓国での出版は2022年。

 魔法戦士に変身して戦う姿は少女に自信を与えるのか、それともミニスカートにハイヒール姿の性役割を植えつけるのか?
 少女文化コンテンツがもつ二面性への問いを発端とし、ディズニープリンセス、おもちゃ、外遊び、ゲーム、魔法少女アニメ、文学、K-POPアイドルまで、子どもたちが触れるコンテンツが内包するジレンマ、問題点を洗い出す。
 次世代の子どもたちが大きな夢を見られるよう、その始まりから変遷に至るまで多角的に考察する。    (表紙折り返しの紹介文より)

 書架に並んでいて、思わず手に取った一冊。あまりにもヒキの強いタイトルで。
 著者の年齢の記載が無くて気になりました。読み進んでいくうち、何となく30歳前後かな、とは思えてきたんですが、こういう本で自分の体験も書くなら生年は必須条項じゃないかしら。
 とはいえ、著者のディズニープリンセスの変遷の分析や、韓国での少女小説事情等、とても面白かったです。そう! 女の子は少年主人公ものの作品も読むけど(『十五少年漂流記』とか『トム・ソーヤの冒険』とか)、男の子って読まないのよね、『赤毛のアン』も『若草物語』も、多分うちの兄 読んでない。叔父ば原書から入ってた。(というか、私が原書貸したのを切っ掛けに、村岡花子翻訳版を読んでた) 一度電車で文庫版の『小公女』を読んでる大学生くらいの男の子を見かけて、何で読んでるのか理由を訊きたくて仕方なくなったことを思い出しました。…訊きませんけど。
 アニメを中心とする魔法少女史についても、目から鱗!な記述が多く、『魔法使いサリー』が「魔法の力を公の場で使うことを禁じられている」ことが当時 ちゃんとした教育を受け始めたのに生かせない少女の立場を現しているとか、『奥様は魔女』に影響されているとか、「そういう視点で見たことなかったなぁ」と思うことしきり。やがて魔法少女ものが男性目線を意識した作品(『キューティーハニー』等々。…でもキューティーハニーを魔女っ子ものとして見たことなかったなぁ)に移行してこのジャンルは女の子に離れられ、いったん廃れることに。引き換えに『ベルサイユのばら』が興隆、にも驚きましたが。そこに繋がるとは思わなかったわ。
 そして現れる『セーラームーン』。日本での放送と、そんなにタイムラグなく視聴してたのね~。以前NHK BSでやっていた特番『全美少女戦士セーラームーンアニメ大投票』を見て、この作品がある年齢層の女性に多大な影響を及ぼしていることは知っていましたが、全世界的なものだったのか。…って、フィギュアスケーターのメドベージェワも大ファンでしたね。ただ、この作品への社会的評価は結構辛辣で、「女性として生まれ、生きることを肯定的に捉えさせてくれた」「その一方で女性や少女であることの不自由さやネガティブな面については徹底的に見せないようにしていた」。…確かに。明るく楽しい作品にしようと思ったらそこには触れない。
 K-POPアイドルについては、何もかも知らないことだらけでした。元々私が、アイドルにそんなに興味ないもので。本当、商品化される女の子って大変; 女性自身が、どこまで社会に沿って価値観形成してるか、かなり無自覚だろうし。
 「一体途切れた」とされる期間には、『クリーミーマミ』や『ミンキーモモ』があった筈。それらについてはどう分析されるのか、でもこれも男性ファンの多い作品ではあるから、「男性目線作品」と一緒にされるのかしら。色々考えさせられました。