ネタバレになってる気がします、すみません;
中央アジアのアラルスタン。ソビエト時代の末期に建てられた沙漠の小国だ。この国では、初代大統領が側室を囲っていた後宮(ハレム)を将来有望な女性たちの高等教育の場に変え、様々な理由で居場所を無くした少女たちが、政治家や外交官を目指して日夜勉学に励んでいた。日本人少女ナツキは両親を紛争で失い、ここに身を寄せる者の一人。後宮の若い衆のリーダーであるアイシャ、姉と慕う面倒見の良いジャミラとともに気楽な日々を送っていたが、現大統領が暗殺され、事態は一変する。国の危機にもかかわらず中枢を担っていた男たちは逃亡し、残されたのは後宮の少女のみ。彼女たちはこの国を――自分たちの居場所を守るため、自ら臨時政府を立ち上げ、「国家をやってみる」べく奮闘することに。
思いもかけず国防相に就してしまったナツキ。反政府組織アラルスタン・イスラム運動(AIM)が起こす内紛に対処し、外国からの介入を回避しなければならない。なのに国民はなかなか言うことをきいてくれないし、その上、毎年恒例の預言者生誕祭の歌劇まで行わなくては。
内紛、外交、宗教対立、テロに陰謀、環境破壊と問題は山積み。
AIMの若きインテリ幹部ナジャフの主張には一理あり、謎の吟遊詩人で武器商人のイーゴリは何を考えているのか、軽薄を装ってあらゆることに絡んでくる。後宮のボス ウズマはアイシャたちを敵視し、協力どころか「政権を簒奪した」と摘発してきた。
どうやらこの国は、ソビエトからの独立当時からの重大な機密、遺物を抱えているらしい。それでも、つらい今日を笑い飛ばして、明日へ進み続ける彼女たちが最後に摑み取るものとは――? (帯文に付け足しました)
辻村深月さんがムック本で紹介されていて、興味を持った本。
これは、ジャンルとしてはSFなんだろうか。架空の国の、架空の事変。妙にリアルな設定がどこまで史実なのか、ソ連とにかく怖すぎるだろう(苦笑;)。「いまどき、領土的な野心を隠さない国なんてロシアくらいなもの」って台詞が響きます。
面白かったです。「ああ、ここをもうちょっと笑えるようにできなかったか」とか「バランスが微妙;」とか、あと歌劇の重要性も今一つ把握できず、ツッコミどころはそこそこあった気がしますが、随分お勉強になりました。イスラムって、宗派によっちゃジェントルマンなのね。そもそもアリー大統領暗殺犯が判明したのにも驚きました。そこは全然気にしてなかったわ(←おい;)。
とにかくキャラが立ちすぎるほど立っていて、みんな背負ってる過去が重い。それがこの国の成り立ち、在り様にも繋がってくる訳で、それにしちゃ何もかもうまく行きすぎじゃないか、とも思いましたがそこはそれ、その分後味はいいし。
そうそう、ハルヴァも出てきました、米原万里さんのエッセイ読んで以来、一度食べてみたい憧れのスイーツ。そうか、幻のお菓子ではなくなってきたのね、いずれ日本でも食べられる日が来ますように。