読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

神獣夢望伝 武石勝義著 新潮社 2023年

 日本ファンタジーノベル大賞2023 大賞受賞作。
 ネタばれあります、すみません;

 燿の国の山奥の小村 楽嘉村にて。類稀なる舞手 景はたまたま村を訪れた太上神官・超魏に見出され、首都 嶺陽の夢望宮へ召し上げられた。彼女と夫婦になる約束をしていた童樊は、彼女を迎えに行くにふさわしい地位を手に入れようと、軍に入隊する。燿はこの世界の創造主 神獣を祀る中心地でありながら、他国から国境を常に脅かされていた。
 他国を相手に一人気を吐いていたのは業暈将軍、童樊は業暈の娘 燕芝と共に、業暈の右腕になって行く。だが、隣国 旻は国王の代替わりに伴い、手を変え品を変え狡猾に燿に攻め入るようになっていた。理想ばかり掲げて国土を侵されるまま割譲していく超魏、超魏に対して何もできない業暈。童樊は 超魏の側付 変子瞭に唆されて、業暈に行政の簒奪を勧める。それでも動かない業暈を、童樊は謀反の疑いありと陥れ、刑死させてしまった。代わりに将軍の地位に昇り詰めた童樊は、景をその手に取り戻す。その間も燿は旻から攻め入られた。旻軍には、童樊への復讐に燃えた業燕芝が加わっていた。
 童樊や景と同郷の縹は、幼い頃から同じ夢を見ていた。見たことのない繁栄した都市の風景、その不思議さは縹の周囲の人々も感化し、縹の人柄も相まって、彼がその地を探して旅できるよう、皆が配慮してくれた。そして彼は、数々の悲劇を目の当たりにする。何もできず見ているしかない状況に、縹は己が何者であるかを思い出す。…

 面白かったです。
 歴史物、軍記物でもありながら神話の一面も持つ。最後に訪れるのは静かな絶望、それ故にこの世界の人々の歴史は続いて行く。
 作品中、一番腹が立ったのは超魏に対してでした。いや、ちゃんと現実見ろよ、逃げてんじゃねぇよ、最高権力者ならよう!! 政教分離は本当、正しい。で、結局生き残ってるし。
 目覚める術を失った神獣はこのままなんだろうか。まだ真名を探して旅を続けるんだろうか。いや、続編を望んでいる訳ではないんですが。