読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

千年鬼 西條奈加著 徳間書店 2012年

 連作短編集。
 ネタばれ、になってるかな、すみません;

 三粒の豆
 事故で母親が死んで、父親の身体も不自由になった。幸介は幼いながら小売酒屋に通い奉公に出たが、父親は酒浸りになり、店では苛められ、どこにも居場所がない。そんな幸介の目の前に三人の小鬼が現れた。小鬼達は幸介に、どこでも好きな過去を見せてやると言う。幸介は、母親を事故にあわせた相手を知りたいと、その瞬間を見せて貰う。

 鬼姫さま
 許婚を殺されてしまった織里姫。悲嘆にくれる織里姫の前に、三人の小鬼が現れる。三人の言うまま、過去を見せて貰った織里姫は、その犯人が父親の部下・真木隆国だと知る。織里姫は隆国を自分の側仕えにして、婚約者を殺された復讐を果たそうとする。それはやがて、付近の治水工事にまで繋がって行く。

 忘れの呪文
 お針婆は同じ長屋に住む二人の少女が可愛くて仕方がない。だが、そのうち一人が、不審者に殺されてしまった。池に浮かぶ少女の死体を見て、お針婆は三人の小鬼に、その事件当日の過去を見せて欲しいと頼む。それはお針婆の、忘れてしまっていた過去を呼び起こした。

 隻腕の鬼
 飢饉が続いて、村では年寄りと子供を間引くことになった。去年娘が生まれたばかりの駒三はそんなことはできないと、一揆を考えている。村に祀られている鬼神さまの片腕にあやかろうと、三人の小鬼にご神体になる前の「鬼神さま」を見せて貰う駒三。その実態は、狂気に捕らわれた一人の百姓だった。駒三は別の方法はないか考え始める。

 小鬼と民
 山の中で、小鬼は民と名乗る幼い娘と出会った。民は生まれたばかりの弟を探していると言う。一緒に弟を探して、幾つもの山を越える小鬼。だが、弟は見つからなかった。弟を見つけるため民に過去を見せる小鬼。そして、民の心には<鬼の芽>が生じてしまった。

 千年の罪
 自分の罪に気付き、民は人鬼になってしまった。人鬼になった以上、もう生まれ変わることもできない。小鬼はそんな民が見捨てられず、天の理を乱す罪を犯してしまう。小鬼はその償いのため、次々に生まれ変わる民の魂を救う決意をする。

 最後の鬼の芽
 多美は禿として、天神の姉に従い京都にいた。目の前で姉とその良人を殺された多美は、衝撃のあまり人鬼と化してしまう。小鬼は力を振り絞って阻止、だが力尽きてその体は砕けた。…
 

 江戸時代の千年前でも年貢とか一揆とかあったのかなぁ、とちょっと疑問に思いつつ。
 小鬼の運命は切ないですねぇ。人間の赤ん坊に生まれ変わって、ってその辺りは本当、切なかった。ラストの民でちょっと救われるのですが、それにしてもほんの一筋の光、といった感じで。
 表紙が可愛くて好みでした。