読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

睦月童 西條奈加著 PHP研究所 2015年

 日本橋国見屋の息子・央介と、奥州から招かれた座敷童・イオとの連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 第一話 睦月童
 元旦、日本橋国見屋に一人の幼女が招かれた。奥州睦月の里からイオには、不思議な力があるという。曰く、イオの目を見ると、罪人には自分のしでかした悪事が目の前に思い浮かんでくるのだとか。国見屋の主人は放蕩息子の央介が、この頃江戸を騒がしている押し込み強盗・風塵一味の仲間なのではないかと疑っていた。果たして、央介はイオの目を見て脅え始めた。央介は本当に押し込み強盗の一味なのか。

 第二話 狐火
 イオと央介は、夜鷹の元締めをしている鯨の勇五郎と親しくなった。聞けばこの頃夜鷹たちが、仕事場に狐火が出る、と不安がっているという。特に新参者のおふでが必ず狐火を目撃する、と聞いて、央介たちはおふでの周りを調べ始める。

 第三話 さきよみ
 イオを連れて町外れに出かけた央介。イオはいきなり、「睦月神のにおいがする」と走り出した。そこにいたのは同じ里出身の女・ルイ、さきよみの力を持つ彼女は、結納品問屋・掛井屋の若旦那に見初められて子供を身籠もっているという。子供が出来た里の女は、睦月の里で出産しなければならないしきたりがある。だが、掛井屋の大旦那たちは、何とか彼女を引き留めようとしていた。

 第四話 魔物
 イオを見て、往来で色を失った男が二人いる。二人は御書院番頭頭の氏家東十郎の家臣で、その様子を見ていた旗本・小出彪助は、氏家東十郎が悪事を働いている証拠が掴めるのではないか、とイオ達に接近してくる。小出は過去に、やはり睦月の里出身の女・ナギと昵懇になった経緯があった。

 第五話 富士野荘
 睦月の里の領主が変わった、氏家東十郎から小出彪助になった、と聞いて央介は不安にかられる。小出彪助はナギとの過去から、睦月の里を潰す気でいた。央介とイオは、急ぎ睦月の里に向かう。

 第六話 赤い月
 池底にある睦月の里では、赤ん坊は母親の死と引き替えに生まれてくる。だがその子供も、近年では育たなくなっているらしい。イオと共に出産現場を見た央介は、その異様さに度肝を抜かれる。

 第七話 睦月神
 小出彪助は睦月の里を、ひいてはその大本である睦月の神を殺す算段を、ナギからの情報を元に確立していた。だが、その方法は里の住人すべてを死に至らしめるものだった。その異変は、容赦なくイオをも襲う。…


 イオの不思議な能力にまつわる短編が次々と…という流れかと思っていたら、最後は結構大がかりな所まで広がりました。『竹取物語』まで出てくるとは思わなかった。でもあれ、不老不死の薬を貰ったのはおじいさんとおばあさんじゃなかったっけ? 帝が貰った、っていう話もあるのかな。
 睦月の里の長・カナデの語る「永久の美と若さ」ってのは、わかるようなわからないような…。美や若さを誇っても、ずっと穴の中で暮らしてたらそんなにちやほやされないじゃん。外の世界で謳歌してこそとい気もしないではない。でも確かに、若い女の子を、男性は選んで行きますよね(苦笑;)。
 続き書く気満々なんだろうなぁ、というラストは個人的にあまり好きではありません。でもあそこでイオを殺してしまうのは、確かに切ないよなぁ。難しいもんです。