読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

パーク・ライフ 吉田修一著 文春文庫 2004年

 単行本は2002年発刊。
 第127回芥川賞受賞作。短編『flowers』収録。

 パーク・ライフ
 「ぼく」が停車中の地下鉄の中で、ついうっかり声をかけてしまった見知らぬ女性。満員電車の中、機転の効いたフォローをしてくれた彼女は、日比谷公園でぼくをよく見かけていたと言う。彼女が他に気になっていたのは、風船をまっすぐ上げようと工夫している初老の男だとか。
 郷里から出て来た母親にアパートの部屋を譲り、自分は離婚寸前で別居状態の友人・宇田川夫婦のマンションに泊まり込んで、ペットのリスザルの面倒を見る。職場の先輩・近藤さんは奥さんと別れていて、二週間に一度、娘と会える日を楽しみにしている。初恋の相手が結婚することを知り、動揺する。「ぼくの分身」はパソコンの中で旅をしている。彼女はぼくを、写真展に行こう、と誘って来た。

 flowers
 田舎から出てきて、運送会社で働く「僕」。先輩に当たる望月元旦は個性的な人で、その羽毛のような軽さが、僕の従兄・幸之介を思い起こさせた。上司の永井さんの奥さんと不倫をし、それを隠すことなく僕まで誘ってくる神経、馬鹿にされているとしか思えないトーク番組への出演を自慢げに語る感覚。永井さんの一世一代の抵抗を踏みにじる無神経さを、僕は思わず足蹴にする。一方、祖母を安心させるためとはいえ二組一緒に結婚式を挙げるほど仲の良かった幸之介は、妻の影響を受けたのだろう、僕の領域を侵していく。…

 同じく、オードリーの若林正恭さんが紹介していた三冊中の一冊。あと一冊は岡本太郎の本でしたね。
 純文学というのは、ふと自分を引き合いに考えてしまう作品のことを言うんだろうか、と今回思いました。日常を淡々と描く世界。見せ場や盛り上がりがある訳でもない。
 『flowers』の方は見せ場はあったか、シャワー室での一件は山場でしたね。あんな目にあっても「僕」に年賀状を送ってくる元旦、その鈍感力に、「僕」は救われているのかもしれない。
 …でも私は望月とは、あまり友達になりたくないな。裏でどう思われてるかわかんないし(笑)。