読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

“文学少女”と慟哭の巡礼者(パルミエーレ) 野村美月著 ファミ通文庫 2007

 “文学少女”シリーズ5冊目。
 ネタばれあります、すみません;

 受験勉強に勤しむ遠子先輩をよそに、琴吹ななせと初詣に出かける心葉。二人の距離は縮まりそうだったのに、いきなりななせが怪我をして入院した、と後輩の竹田千愛から連絡が入る。見舞いに行った心葉が目にしたのは、琴吹ななせと朝倉美羽が口論する姿だった。
 ――朝倉美羽。かつて心葉の目の前で、校舎から飛び降りた少女。
 美羽は心葉に、ななせや芥川一詩が自分と心葉を会わせてくれなかったのだ、心葉の母親が書いた手紙を渡してくれなかったのだと囁く。美羽を疑うことができず、ななせや芥川との関係はきしみ始める。学校の屋上から飛び降りた訳を訊いた心葉に、美羽は呟く。「……カムパネルラの望みは、なんだったと思う?」
 小さい頃美羽と一緒に、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』をまねて作った自分達の街の地図を、今度は遠子先輩と巡る。遠子先輩が語る宮沢賢治の物語に、心葉は気分が悪くなる。何かを思い出してしまいそうになる。
 美羽を理想化するな、一人の女として見てやれと言う芥川。入院している美羽を気遣ううち、以前は見えていなかった美羽の別の顔に、心葉は否応なく気付いていく。親や祖母との確執、心葉の母親が語る美羽の歪み、偶然ディスカウントショップで見かけた美羽の行動。美羽の病室にあった井上ミウのデビュー作『青空(ソラ)に似ている』は、美羽によって憎しみに満ちた文章に書きかえられていた。
 吹雪の日、再び飛び降り自殺を図ろうとする美羽に、心葉はつき従おうとする。寸での所で思い止まれたのは、美羽と別れてからの日々の積み重ねだった。迎えに来てくれた遠子先輩や竹田千愛の前で、美羽はトラックに飛び込む。その姿をかつての親友に重ね、壊れたのは千愛の心だった。
 井上心葉、朝倉美羽、芥川一詩、琴吹ななせ、竹田千愛とその彼氏櫻井流人。皆の前で、“文学少女”天野遠子が口を開く。
 「わたしが、幸いの見える場所を、教えてあげる」―― …。

 今回下敷きになっているのは宮沢賢治、特に『銀河鉄道の夜』。
 何だか「アナリセ」(©『のだめカンタービレ』…ってことはないか)みたいでしたね。作品が書かれた背景や作家の境遇から読み解く、みたいな。宮沢賢治はそこそこ読んでるつもりだったのですが、『銀河鉄道の夜』の初稿、第二稿、第三稿…とかになると、そりゃ読んでねーよ、とか思いました。
 美羽ってこんな子だったのね~。自殺未遂後の根性というか執念というかには脱帽。でもホンモノ(…;)の千愛ちゃんの前にはあえなく敗北しましたけど。そう、千愛ちゃんの再びのメインっぷりはお見事!でした。
 しかし、心葉ってモテるね~。これって心葉を中心とした、「みんなボクを好きになる」恋愛シミュレーションパターンの小説でもあったんだ、と今頃気がつきました。
 実は私は、宮沢賢治のよさ、ってのがちょっと分からなくてですね…; と以前、友人にカミングアウトした所、「喚起力が凄いんじゃないか」との意見を貰いました。確かに、宮沢賢治の影響を受けた小説家や漫画家や映像作家や脚本家や、数え切れないほどいますものね。でも私はどちらかと言うと物語読みで、そちらだけを中心に読んでしまうと、「…何か中途半端な…」だったり、「…オチは?」だったり、「ちょっと意味がわからないかも…;」だったり、そういう印象が強かったかなぁと思ったり。…ああ、喧嘩売ってる気がするなぁ、そんなつもりはないんですけど;;
 遠子先輩の語る宮沢賢治像「本当に大切なのは、手に入れることじゃなくて探し続けること」「自分が置かれた立場がどんなものであっても、理想を持ち続けた」 …時には友人に愚痴を言い、妹の死に絶望しながらでも、を読み取ることはできなかったなぁ、残念。
 さて、番外編を挟んで、その次はいよいよ“文学少女”の秘密です。
 そうそう、「オノマトペ」ってフランス語だったんですね、知らなかった――!