読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

“文学少女”と恋する挿話集(エピソード)2 野村美月著 ファミ通文庫 2009年

 琴吹ななせの親友 森ちゃんとその彼氏 反町くんをメインにした短編集。

 名前にコンプレックスのある“森ちゃん”は、クラスメイトの芥川くんに憧れている。芥川くんは女子の間で人気ナンバーワン、でも男子の人気ナンバーワンは琴吹ななせだ。美人でスタイルもよくて、でも無愛想なななせ。彼女が不器用で自分の感情を素直に表現できないだけだと気付いた森ちゃんは、ななせの友人になった。 ‥「森ちゃんのつぶやき」

 反町亮太は森ちゃんに惚れている。なのにクラスメイトには琴吹ななせが好きだと勘違いされたまま。あろうことか森ちゃん本人にまで誤解されてしまった。思い悩む反町に、天野遠子が「ドライフルーツをぎっしり詰めて焼き上げた大人のケーキ」ハイネの詩集を押し付ける。 ‥「“文学少女”と愛を叫ぶ詩人」

 井上心葉にロリコンの噂が立った。必死で否定する心葉をよそに、遠子先輩は「ゴルゴンゾーラのリゾット」『ロリータ』について語る。 ‥「“文学少女”の今日のおやつ~『ロリータ』」

 付き合い始めて一カ月、反町は森ちゃんとキスをしたくて仕方がない。何度もチャンスを伺うが、タイミングは外されてばかり。どうやら森ちゃんには“憧れのシチュエーション”があり、その条件は真夏にならなければ揃わないらしい。焦る反町に遠子先輩は、「真っ赤なロブスター」バイロンの詩集を渡す。バイロンに力づけられ、反町は森ちゃんを真冬のプールサイドに誘う。 ‥「“文学少女”とキスを待てない詩人」

 井上心葉に芥川とのホモ疑惑の噂が立った。激しく疲労する心葉の前で、遠子先輩は「クリスマスにお父さんが切り分けてくれるローストターキー」『飛ぶ教室』について語る。 ‥「“文学少女”の今日のおやつ~『飛ぶ教室』~

 二年生、井上心葉と同じクラスになった琴吹ななせの文化祭前までを描いた 「ななせの恋日記」

 森ちゃんはななせに構ってばかり、反町ははっきり言って拗ねている。クリスマスも正月もファーストキスはお預けのまま。井上とななせがくっついてようやく落ち着いて迎えたバレンタインデー、今度は森ちゃんの弟や妹に邪魔されて、しかも翌日になると井上とななせの仲はまた危ういものになっていた。井上は二股をかけていたのだと憤る森ちゃんを宥める反町。反町が見る限り、井上も辛く苦しい想いを抱えているようだった。反町の頭の中に、遠子先輩に紹介された「山芋をすり下ろして作るしんじょ」中原中也の詩が渦巻く。 ‥「“文学少女”とよごれつちまつた詩人」

 井上心葉にマザコンの噂が立った。出所は妹の分を間違えて持ってきたメルヘンちっくな弁当。芥川は心葉に、遠子先輩の気遣いはお母さんに似ている、と想いもかけない発言をする。その日、遠子先輩は「みりんとお砂糖で甘く煮た鰈」“銀の匙”を食べていた。 ‥「“文学少女”の今日のおやつ~『銀の匙』~

 3月、森ちゃんは井上のことで落ち込むななせにべったりくっついている。二人で行くつもりだったコバルトパークにも、何だかんだで3人で行くことに。ななせを慰めながらも結局森ちゃんを惚気る反町に、ななせは力づけられたらしい。3月14日ホワイトデーで卒業式。琴吹、井上、反町それぞれが天野遠子に贈り物をする。手さげの紙袋、ぶあつい茶封筒、“恋をしろ”と言う言葉。遠子の後ろ姿に反町は、「金色に輝くマンゴーと、爽やかなヨーグルトが混ざりあった、甘くてすっきりしたラッシー」タゴールの『ギタンジャリ』を重ねる。 ‥「“文学少女”と祝福する詩人」

 心葉との初デートを語る 「ななせの恋日記 特別編」…

 
 ああ、これは可愛い。本編は結構どろどろした恋愛沙汰が中心だったので、森ちゃんと反町くんの、年相応の恋愛模様がほっとしますね。もう好きにいちゃついてくれ、ってくすくす笑うしかないわ。誰からも祝福される恋って安心できますねー。
 今回は詩集がメイン。教科書以外で詩を読んだことはほぼないので、申し訳ないけど馴染みのない世界でした。詩は声に出して読むものなんでしょうね。
 ななせも、心葉目線でないと可愛いなぁ。
 中勘助銀の匙』は高校か大学で読んだかな~、確か氷室冴子さんの『さよならアルルカン』で紹介されてたんですよ。当時はあまり面白いと思わなかったんですが、今読み返したら面白いのかな。
 あとはケストナーの『飛ぶ教室』、…そういう風に読んだことはなかったんですが;; そうそう、“やおい”って言葉をここでも見ましたが、これは注釈も付けずに書いて意味が通じる単語に、もうなっているのか??
 森ちゃんの弟くんの名前は結局出て来ませんでしたね。泥棒の名前ってことはルパンでいいのかな。
 さて、3からは雰囲気が変わってしまうとか。多少不安になりつつ。