読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

押入れのちよ 荻原浩著 新潮社 2006年

 短編集。

 お母さまのロシアのスープ
 中国に近い森の中で、ターニャとソーニャの双子の姉妹はお母さまと暮らしている。家財道具を次々と売り払い、いよいよ生活が困窮して、ソビエトの兵隊が来た日。お母さまを苛める兵隊を懲らしめるために、二人は火かき棒を手に兵隊の前に飛び出した。

 コール
 美雪と雄二と岳は大学のサークルで知り合った。貧乏ながら馬鹿ばかりやって楽しかった日々、案の定の三角関係。彼女を卑怯な手で射止めて、でも彼は死んでしまった。墓参りしながら、でもまだなかなか告白はできずにいる。

 押入れのちよ
 失業して引っ越した格安アパートには、幽霊がいた。真っ赤な振袖を着た女の子はちよと名乗る。初めは怯えていたが生い立ちを聞くうちに何だか親しみが湧いて来た。顔相が見られるというちよに、面接先の社長の顔写真を見せたり、この頃連絡のない彼女の写真を見せたり。やがてアパートの大家が、ちよをお祓いにやって来る。

 老猫
 身寄りのない叔父が死んで、その洋館を相続することになった。アンティークの好きな妻は大喜び、娘も気に入っている様子。叔父が飼っていた老猫をそのまま引き継いだのはよかったが、次第に家族は猫中心の生活を送るようになる。

 殺意のレシピ
 釣りが趣味の夫は海藻で、山歩きが好きな妻は毒草で、お互いの命を狙う。一見明るい夕食の風景は、やがて緊張感を孕み…。

 介護の鬼
 寝たきりの舅の介護に疲れた嫁は、呆けをいいことに虐待を始めた。甦るのは姑への憎しみ、彼女が寝たきりになった時もこうして憂さを晴らしたっけ。その一言を漏らした時、舅に異変がおこった。

 予期せぬ訪問者
 はずみで愛人を殺してしまった。死体をばらばらにするしかない、と風呂場に抱え込んだ時、玄関のチャイムが鳴る。聞けば清掃サービス業者だとか。

 木下闇
 幼い頃、妹が行方不明になった母親の生家を、15年後、姉が訪れる。もう一度妹を探すため、姉は何かに導かれるように、家の前の大きな楠に登りはじめる。下には青ざめた顔の従兄の姿が…。

 しんちゃんの自転車
 母の生まれ故郷で仲良くなったしんちゃん。夜中、自転車に乗って誘いに来る。しんちゃんの自転車の後ろに乗って、二人でおたま池のほこらへ。先週そこで溺れかけたけど気にしない。…


 全体的にホラーテイストな短編集。
 う~ん。すらすら読めはしたのですが、で、面白かったものもあったのですが。
 多分コメディとして書かれている作品が笑えないのは私の心が狭いのか、余裕が無くて荒んでいるのか。『介護の鬼』で、姑が寝たきりになった時、舅は介護の手助けをしてやったのか。嫁を弁護する気はないのですが(何しろココロザシが低すぎる)、嫁に何やかや押し付けておいて今さら復讐に走るのもなぁ。そうか、私は人間関係のどろどろが嫌なんだな、と改めて気が付きました。もうすっぱり縁切っちゃえよ、精神衛生的にもその方がいいよ、と『殺意のレシピ』なんかでは思っちゃうんだよなぁ。
 妙に爽やかで哀しい『コール』や『押入れのちよ』は素直に面白かったです。