読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

f植物園の巣穴 梨木香歩著 朝日新聞出版 2009年

 明治時代を舞台にした幻想小説。…多分(笑)。
 粗筋書いてますが、あまり意味はない気がします(苦笑;)。

 f植物園に赴任した矢先、治療途中で放っていた虫歯が疼き始めた。とりあえずf郷歯科にかかったが、助手である奥さんが犬であったり、痛み止めの薬で頭がぼーっとしたり、どうも妙な具合である。抜歯のための麻酔をかけられ、心は深く水郷を彷徨う。
 下宿の大家さんが鶏頭に見えて、やがて幼い頃アイルランドの昔話をしてくれた大叔母に重なる。近所の洋食屋の女給・千代さんと、いつの間にか姿を消したねえやの千代と、お腹の子供もろとも亡くなった妻・千代が重なる。今間借りしている家と、妻・千代と住んでいた借家と、ねえやも一緒にいた実家が重なる。マクニール先生から貰ったウェリントン・ブーツはどこへ行ってしまったのだろう。
 幼い頃宝物を隠していた木のうろ、川上から流れて来た飼い犬、失くしたものを一緒に探してくれると言うカエルに似た少年。
 自分は何を探してどこを彷徨っているのか、元の世界に辿り着けるのか。…

 とりあえず一言。こんな歯医者は嫌だ――――!
 もう一言。こんな旦那も嫌だ―――――!
 相変わらず静かで品のいい文章、どことなくユーモラス。読んでるとなんだか口許がほころんでしまう。スズムシを飼って「私は子供ながら金輪際、女のためにこのようなはしたない振る舞いはするまいと心に誓ったものだった」と主人公が決意する辺りは、思わず笑ってしまいました。うちでもスズムシ飼ってましたからね、心当たりがありすぎて(笑)。
 とか言いながらこの主人公の性格には眉を潜めましたけど。「妻を亡くした」と言いながら全然感情が見えてこないんだもの、奥さんに対する態度とか見ててもまぁムカつく。明治の男だからとかそう言うレベルでもないだろう、ただ自分を中心に据えてほしいって我儘だろう?? とか思ってたら、まぁ最後のどんでん返しで「ああ、そうか!」って来るんですけど。
 傷痍軍人さんは何かの伏線かと思ってたんですが、そうでもないようで。…と言うか、あのあたり全部夢と言うことか。fって確か「揺らぎ」って意味もありましたよね、それも狙ってるのかしら??
 相変わらず、この人の作品は波津彬子さんの絵で見えて来ます。