読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

いのちのパレード 恩田陸著 実業之日本社 2007年

 無国籍で不思議な短編集。

 『観光旅行』
 妻と二人、観光ツアーに出かけた「私」。おとぎばなしの地下に眠る巨人の話、その舞台になった村は、確かに一晩で巨大な石の腕が生えてくる土地だった。…
    …『仮面の忍者赤影』にこんなシーンがあったような…。

 『スペインの苔』
 幼い頃祖父に陵辱されて以来、何故か人に軽んじられるようになっていた「彼女」。傍らにあったロボットの動力源は、スペインの苔だった。

 『蝶遣いと春、そして夏』
 蝶遣いは家の裏庭に小さな温室を持っていて、そこで蝶を育てている。蝶遣いに憧れる少年は、一夏を共に過ごす。蝶遣いは蝶の道を探し、山の声を聞き、死者の花を見つけ、地下に沈める。
 
 『橋』
 西と東の境界にある橋を、バリケード当番する女たち。警備兵と争いながら西から走ってきた若い男は、アケミの弟だった。…
    …「忙しいふりする男に限って、他人の時間奪うのは平気なんだから」いや、男だけじゃないと
    思うけど、ちょっと笑ってしまった(笑)。
    本来なら、こういう目にあっていたのは日本の筈だったんですよね。韓国や朝鮮はとばっちりを
    受けてしまった。偉そうなことは何一つ言えない筈なんですが。

 『蛇と虹』
 妹と姉が、真っ赤な夕陽の中回想する。妹は黒い犬を姉が撃ったと言い、姉はそんな犬はいなかったと言う。ハシバミ色の目をした作曲家、自分と同い年の娘を連れて来た父親、蛇は地を這い、虹は天を這う蛇だという中国の故事。

 『夕飯は七時』
 僕らきょうだい三人は、聞いたことのない言葉を聞くと、変なものを想像して実体化してしまう。「やぶからぼう」「つんつるてん」「じっぱひとからげ」「ちんぷんかんぷん」「てとろどときしん」、それに「ごくらくとんぼ」。くしゃみをすると消えるんだけど。

 『隙間』
 幼い頃から隙間が怖い。特に実家の納屋の隙間が。母の死亡で久しぶりに郷里に戻った彼は、そこで幼なじみの女に会う。彼女は、彼の探しているものを知っている、と言う。

 『当籤者』
 「ロト7」に当たってしまった。この二週間の間に自分を殺した者に賞金が贈られる。折り合いの悪い女房が、犬を連れた近所の老人が、みんな怪しく思えて来る。…
   …これ、面白かったなぁ。ブラックだったけど、何か凄くしっかりしてると言うか…。

 『かたつむり注意報』
 作家シン・レイの作品の舞台になった町を訪れた「私」。空襲から町を守った巨大かたつむりが、今夜この町に「満ちて」来ると言う。…
   …なめくじだったら絶対許せないのに、かたつむりなら許せるのは何なんだろう(笑)。

 『あなたの善良なる教え子より』
 かつて暴力を振るう父親を殺した「私」。その時自分を庇って証拠を揉み消してくれた恩師に力づけられ、「私」は自分の信じる善を為す。子供を組み敷いていた神父を、妹を中傷し死に追いやった資産家の三兄弟を。そして今また、恩師に薬を送る。

 『エンドマークまでご一緒に』
 若手弁護士のフレッド君は、朝から歌い踊る。職場の上司も同僚も、街角で出会った可愛い女の子も、彼女の飼ってるライオンまで。だってこれはミュージカルなんだから。

 『走り続けよ、ひとすじの煙となるまで』
 広大な密林の中、ぐるりと円を描いて失踪する「函」。巨大な駆動体の中で、王国が生まれ、また滅んでいく。

 『SUGOROKU』
 一日の終わり、「お告げ」を聞く少女たち。この町を出るにはお告げに従って部屋を移動し、「上がる」しかない。アニは早く町を出て、ご褒美を貰って帰りたい。だが偶然同室になったキキは、「上がり」たくないと言う。

 『いのちのパレード』
 ありとあらゆる動物が歩いていく。そして、私たちは取り残された。

 『夜想曲
 とある書斎で、主を待つ三人の「声」。彼らの声を聞けたのは、部屋の主に従っていた青年だった。…
   …いいなぁ、これ好きだなぁ。ロマンチックなアシモフ(笑)。

 海外の翻訳もののような雰囲気。後書きによると恩田さん自身そういうものを目指したみたいですね。装丁もいかにもそんな感じ。中表紙の裏の英語の奥付とか、心配りが効いてる(笑)。
 何となく連想したのはレイ・ブラッドベリ。…て言うか、私あんまりこう言う類いは読んでないから、ブラッドベリしか思いつかなかったというところでしょうか(苦笑;)。
 やっぱり長編で書いて欲しいと思う作品もありましたが、面白かったです。恩田さんすごい、引き出しどれくらいあるんだろう。