読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ロードムービー 辻村深月著 講談社 2008年

 短編三本収録。
 ネタばれというか、あらすじかなり細かく書いてます、出たばかりの本で本当、すみません;

 ロードムービー
 トシとワタルは小学6年生になる春休み、家出することを決意した。
 トシは頭もよくて駆けっこも速い。友達になりたい、と近付いてくる奴も結構いる。でもトシはワタルと友達になりたかった。同じ夕焼けを、一緒にずっと黙って見た時から。だが、新田アカリにはそれは面白くなかったらしい。やがてトシを標的にしたいじめが始まる。
 あからさまな蔭口、仲間外れ、池に捨てられた上履き。トシは負けずに学級委員に立候補するが、アカリの前に惨敗する。ワタルはトシの為に泣き、トシに児童会長選挙に出るよう背中を押す。
 二人だけの選挙活動が始まった。アカリにはちょっと不良がかった兄がいるから、上級生も頼みにならない。ポスターは破られ、下駄箱には嫌がらせの手紙が入れられた。トシの身代わりにワタルは殴られ、アザだらけの顔でトシの応援演説をする。
 ワタルの父親の工場が経営に行き詰まり、ワタルは遠くに転校することになった。トシはワタルと離れたくない。融資してやってくれ、でなければワタルを引き取ってくれ、と両親に頼むトシ。だがそんな訳には行かない。希望を通すため、トシはワタルと家出を敢行する。…

    …泣きそうでした(←恒例・笑)。職場で昼休みに読んでたら丁度クライマックスに行きあたり
   まして、「これはまずい!」と堪えました。辻村さん、こう言う「いじめ」書くの、妙にリアルで
   上手いなぁ。でも主人公たちは真っ直ぐ対峙するんですよね。折れそうになりながらも正々堂々、
   正攻法で対決する。現実ではこんなに上手くはいかないでしょうが、でも本の中でくらいはすっきり
   爽快な気分になりたいですよね。
    …しかし、このオチは気付かなかったなぁ。


 道の先:
 バイト先の塾の生徒、中学三年の大宮千晶に好かれてしまった「俺」。頭がよく勝ち気で資産家のお嬢様、気に入らない先生がいると精神的負担をかけて追い出してしまう千晶は、同級生にとってオピニオンリーダーでもあり、畏怖の対象でもある。食事やデートに誘う彼女の気持ちをはぐらかした矢先、千晶が塾を休みがちになり、やがて行方不明だと言う連絡が入る。彼女の我儘に付き合う「俺」を、本当は優しくない、と言い放つ彼女は、「俺」には知っている誰かを連想させて放っておけない。「俺」は彼女を探す。…

   …この主人公は誰か、全然忘れてました; と言う訳で彼の「辛い過去」も思い出せず、彼の言葉も
   私には今イチ説得力なくてですね;; う~ん、この短編集から入った人には、ちょっと不親切な
   お話だった気がする。…でも『冷たい校舎~』読み返す気にはならないんだよなぁ;

 雪の降る道:
 友達の『ヒロちゃん』が母親に殺されてしまった。以来、ヒロは病気になって学校に行くこともできない。みーちゃんは毎日家に寄ってくれて、四つ葉のクローバーだの椿の花だの色々なお見舞いをくれるけれど、それもヒロには鬱陶しいだけ。思い余ってみーちゃんの上着についてるウサギのアップリケをくれと無茶を言い、それができなければもどこかへ行っちゃえ、と言い放ってしまう。そしてみーちゃんはいなくなってしまった。部屋には切り刻まれた上着。ヒロは従兄弟のスガ兄と一緒に、雪の中外へ出る。…

   …みーちゃんの想いが頑ななヒロの心を解して行く、いいお話なんですが、このみーちゃんが
   『冷たい~』の深月と同一人物だと思うとちょっと首を傾げました。
   こんなにしっかりしてたらあんなことにはならないような気が…;


 おお、ハードカバーだ! 図書館で手にとってちょっとびっくり(笑)。
 デビュー作『冷たい校舎の時は止まる』の外伝と言うかスピンオフ作品と言う情報はちらほら眼に入っていたのですが、『雪の降る道』以外はすっかり誰が誰でどう関係あるのか忘れてました(…;)。
 『ロードムービー』は覚えてなくても全然大丈夫でしたね、これ一本で十分面白かった。「タカノのおじさん」って誰さ、とか思いつつ(←こらこら;)。
 『道の先』はちょっとこれだけではきつかったかな、と自分の記憶力のなさを棚上げして言ってみる。ファンだけが分かる話って、自家中毒みたいで個人的にあまり好きではないので;;
 でも、辻村さん、短編上手いんだな、とちょっと眼から鱗でした。長編は前半長くて辛い時があるので。