読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ぼくのメジャースプーン 辻村深月著 講談社ノベルス 2006年

 ネタばれ、ではないけれどいいところは書いてる気がします、すみません; 

 ふみちゃんはぼくの幼馴染み。分厚い眼鏡を掛けて歯に矯正器具をつけて、男子からはブスだの何だの言われているけれど、ぼくはふみちゃんを尊敬している。ふみちゃんは明るくて物知りでピアノも上手で、誰よりも優しい。四年生になってうさぎの世話をすることになった時も、サボりがちなクラスメイトを、そっとフォローしている。決して当てつけがましくないそのやり方に、「うさぎの世話より楽しいことないの?」なんて言う人もいたけれど、ふみちゃんはあっさり笑って「うん。あんまりない」と答える。
 後ろ足を怪我したうさぎのために車椅子を作ってあげたふみちゃん。噂を聞きつけてテレビが取材に来る。でもふみちゃんは前に出ない。ところが有名になったうさぎは、ある朝不審者に惨殺されてしまう。
 第一発見者は、本当はぼくのはずだった。その日風邪を引いて熱を出して、うさぎ当番をふみちゃんに頼んだ。ばらばらにされた血まみれのうさぎたちを泣きながら抱えて、ふみちゃんは職員室に駆け込み、そのまま心を閉ざしてしまう。笑いも泣きもしない、ぼくを見ることもしないふみちゃん。うさぎの無残な姿はネットに載り、そこを手がかりに犯人もすぐ捕まった。市川雄太、K大学医学部三年生の20歳。でも罪状は器物損壊。刑務所に入ることもない。
 ぼくには不思議な力があった。『条件ゲーム提示能力』。「もしも何かをしなければ、ひどいことが起きる」と相手を縛る力。お母さんはその力を封印するよう言ったけれど、ぼくは市川雄太にその能力を使うことを決意する。同じ力を持つ親戚のおじさん・秋山一樹「先生」に通って『力』のことを詳しく聞きながら、ぼくはうさぎ殺しの犯人に対する罰の重さを計り始める。…

 泣きそうでした。何て健気なんだろう。小さい体で一生懸命考える。感情だけに流されることはなく、自分が背負うものまで考えて、罪と罰を計ろうとする。大人の先生も真面目に「ぼく」と向き合うのが心地いい。
 ふみちゃんがとにかくいい。本当、魅力的。魅力的すぎて「ぼく」がメインの章になると読書スピードが落ちてしまったほど(苦笑;)。メジャースプーンのエピソードが結構いきなり出て来たのが少し残念。うっかり読み飛ばしたかと思ってしまいました;
 ふみちゃんだけでなく「ぼく」までPTSDだった、ってくだりに「あっ!」。一人称ゆえのトリックでしたね、ちゃんと書いてあったのに、まんまと引っかかりました(笑)。
 先生は市川に何を条件付けしたんだろう。ふみちゃんと友達であることに誇りを持つ「ぼく」、「ぼく」にそう言って貰えたことをずっと覚えていたふみちゃん。時間はかかるだろうけど、二人とも立ち直っていけるよね。何か、読んでる私まで応援してしまいました。