読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

イン・ザ・プール 奥田英朗著 文春文庫 2006年

 単行本は2002年発刊。
 伊良部総合病院地下にある神経科医師、色白で太った注射マニアでマザコンの伊良部一郎の元を訪れる患者の悲喜劇。

 イン・ザ・プール
 大森和雄(38歳)、出版社勤務。不定愁訴で内臓異常を訴えている。伊良部に運動を勧められ、プール通いを始めた。軽い運動のつもりだったのに、何時の間にやら依存症に。仕事が忙しくて泳げない日には禁断症状まで出て来た。一緒にと誘った伊良部まで泳ぐことに夢中になり、やがて夜中区民プールに侵入して泳ぎたいとまで言い始めた。

 勃ちっ放し
 田口哲也(35歳)、商事会社勤務。別れた妻の淫夢を見て以来、陰茎強直症に陥ってしまった。泌尿器科から地下の神経科に移され、伊良部のカウンセリングを受けるが一向に良くならない。ストレスを溜め込んでいるからだ、別れた妻の罵ればいいと囁かれるが、いざ実行となるとなかなか上手くは行かない。接待旅行にも失敗した後、田口は以前掛かった泌尿器科から大学病院を紹介される。

 コンパニオン
 安川広美(24歳)、職業はタレント兼モデルと言いながら実際はイベントコンパニオン。いつも誰かに見られているような気がする。ストーカーだと言っても周りの誰も信用しない。信じたのは伊良部だけ、広美は伊良部にストーカーのイメージを壊す言動をしろとアドバイスを受けた。下品に、行儀を悪く、でも化粧やお洒落はやめられない。広美の中のストーカーはますます増えて行く。こうなったら決して手の届かない高根の花になってやれ、と広美はとある映画会社のオーディションを受ける決意をする。

 フレンズ
 津田雄太、高校二年生。携帯電話依存症。授業中も食事時もメールを打ち続ける。ケータイを手放すと痙攣が起きるようになり、見かねた両親が雄太を神経科に通院させた。雄太は友達の誘いを断われない。バイトに励んで新曲のCDを手に入れ、リーバイスのビンテージジーンズを買い、麻雀に付き合う。ケータイを持っていなかった伊良部も雄太の影響でケータイを持つようになり、雄太にメールを打ちまくった挙句、いきなり飽きてプラモデルに走る。「友達はいない」と言い切る伊良部を、雄太は羨ましく思うようになる。

 いてもたっても
 岩村義雄、ルポライター。脅迫神経症。たばこの火の始末が気になって仕方がない。伊良部の診察を受けたら、伊良部の余計な一言でガスの元栓も漏電も気になり始めた。マンションの共有部分の蛍光灯を換えたことから、自分が関わったことに対しての脅迫症だと判って来る。やがて自分が書いた記事に影響された人物がいるのではないかとまで思い詰め始めるが、伊良部は却って、近所の病院の嫌がらせを責任転嫁し始める。…

 これも色々映像化されて有名になりましたよね。
 面白かったです、すらすら読めました。ここまで極端に走る例は少ないだろうとは思うものの、何だかちょっと身に覚えのあることばかり。何かが止められなかったりちょっと自意識過剰だっかり、人とのつき合いに悩んだり。もっと酷い人(?)の伊良部と出会って、わが身を顧みる余裕が出て来る。反面教師というか、これも治療法なのかなぁ、名医なのかなぁ(笑)。
 でも友達にはなりたくないですね~。本人も友達いないって言ってますしね(笑)。