読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

スイス時計の謎 有栖川有栖著 講談社ノベルス 2003年

 火村とアリスのシリーズ、短編4本収録。多少ネタばれあります、すみません;

 『あるYの悲劇』:マンションの604号室、インディーズ・バンドのギタリスト山元優嗣が自分のエレキギターで頭を殴られて殺された。いまわの際に「やまもと」と呟き、壁に血で「Y」のダイイングメッセージ。バンド仲間との諍いもなく、離れて住む父親とはあまり交流はないものの殺されるまでの動機はない。最後の言葉や「Y」の文字は何を意味するのか。
 『女彫刻家の首』:女性彫刻家がアトリエで殺された。遺体の首が切断され、替わりに彫刻の首が置かれていると言う異常な状況。被害者の夫は、隣人の男が「騒音が酷い」と妻に言いがかりをつけていたと言い、隣人は、夫が事務所の女の子と浮気して妻と派手な喧嘩をしていた、と証言する。何故遺体の首は斬られていたのか、妻の生前の行動にヒントがあった。
 『シャイロックの密室』:高利貸しの佐井六助が自宅で死んでいた。遺体の側には死因となった拳銃、部屋は佐井自身が手ずから作った閂に施錠されて密室状態。本来なら自殺で処理される所だったが、左利きだった被害者の、右手の指紋が銃に残っていた事から火村助教授に声がかかる。火村は、廊下に掛かっていた絵画の金属製の額が傾いていた事から、現場を密室にした方法を見つける。
 『スイス時計の謎』:被害者は有栖川の高校時代の同級生だった。クラブメイト達との同窓会当日に殺されたらしい。現場には腕時計の風防の破片、犯人がそれを隠そうとした痕跡。クラブメイト6人は皆お揃いの腕時計を持っていた。犯人が破片を片付けた事から、火村が犯人を導き出す。…

 『スイス時計~』で有栖川有栖の初作品誕生秘話が語られます。高校時代、初めて書いたラブレターを渡した女の子が、その夜自殺未遂を起こす。「生きていてもつまらない」と言う彼女の自殺理由を聞いて、アリスはその事実から逃げるように、自作小説に没頭する。久しぶりに同級生に出会った事から、彼女の思い出も蘇る。…この作者の作品が女性にも人気があるのってこういう所だろうなぁ。切ないと言うか哀しいと言うか、胸に詰まるようなエピソードがあったり、小洒落た言い回しがあったり。
 関西人には馴染みのある地名がわさわさ出てくるのも何か嬉しい(笑)。
 推理小説としても、4本どれも面白かったです。