読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

TOURツアー1989 中島京子著 集英社 2006年

 1989年から1992年にかけて、各旅行代理店が実施したと言う「迷子つきツアー」にまつわる連作短編集。ネタばれになるのかな、多分なるな、あります、すみません;

 主婦・三浦凪子はある日、手紙を貰う。差出人に心当たりはないが、独身時代に銀行の窓口で働いていた頃、密かに想いを寄せられていた相手から、らしい。凪子に手紙を渡したのは、ブロードバンド・サービスの加入を勧めるセールスマン。彼は、自分はノンフィクションライターの卵で、以前香港を旅していた時、見知らぬ日本人からこれを言付かったのだと言う。手紙には、手紙の主が香港を旅した時の出来事と、騙されてパスポートを失い、帰りの飛行機に乗り損ねて、そのまま香港に居着くことになった経緯が記されていた。凪子は相変わらず差出人を思い出せないまま、だがすきま風が吹き初めていた夫の関係が修復して行く。『迷子つきツアー』
 バブル期、会社の命令で無理矢理香港への海外ツアーに参加させられた会社員が、その時にいつの間にやらいなくなってしまった青年の事を思い出す 『リフレッシュ休暇』。
 ブログに、かつて添乗員だった自分がしたのと同じような経験が書き込んであるのを見た「わたし」。昔の恋人の癖までも書き込んであるそのあまりにも似た内容に、自分の記憶まで混乱する。「わたし」は自分の記憶を元に、「正しい」事を書いたブログを立ち上げる 『テディ・りーを探して』。
 自称ノンフィクションライター・榎戸ケイスケは、凪子と出会えたことをきっかけに、「迷子つきツアー」について調べ始める。パッケージツアー客の一人を「迷子」として現地に置き去りにすることにより、他のツアー客に「不思議さ」や「奇妙な感覚」を体験させることを目的としたツアー。最初に企画を立てた人物に会い、もう一度香港へ行き、そこで自分に手紙を渡したであろう人物、「吉田超人」の噂を聞く。ケイスケはそのままバンコクに飛び、半ば伝説の人物となっている「吉田超人」に会う。 『吉田超人』。…

 前作『イトウの恋』が面白かったので借りてみました。…何か、今作はいまイチかなぁ。前回私が惹かれた品のよさと俗っぽさとの混在が、今回はなくて。バブル期の狂気の沙汰の中では、本当にこんなツアー企画されたかも、と思えるのが何だか怖い。でも、こういう題材なら、きっと恩田陸さんの方がもっとうまく書いてくれる、と思ってしまう、ごめんなさい;; 私の期待値が高すぎたのかなぁ。