読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

おまけのこ 畠中恵著 新潮社 2005年

 『しゃばけ』シリーズ四冊目、長崎屋の若だんな・一太郎が活躍する連作短編集。ネタばれあります、すみません;
 この記事は「時代もの、大好き」
        →http://blogs.yahoo.co.jp/bones_the_moon/19359971.html
と言う企画に参加して書いています。

 廻船問屋兼薬種問屋・長崎屋の若旦那・一太郎は妖(あやかし)の血を引いているため、人でないものの姿を見ることができる。ただ、「見えるだけ」で何の妖力もない。その上、気合いの入った病弱者。そのためお目付役として、二人の兄や・仁吉と佐助が常につきそって面倒を見る。但し、この二人も人間ではない。本性は齢千年を越える妖『白沢』と『犬神』。若旦那以外はアウトオブ眼中、とにかく若旦那さえ無事であれば何があろうと構わない。そんな二人に若旦那は少し手を焼いている。
 『こわい』:若だんなは菓子屋の跡取り息子・栄吉と大喧嘩した。栄吉の作る菓子がとにかく不味いのだ。栄吉が去った後、後悔して寝込む若だんな。そこへ妖怪・狐者異(こわい)が現れる。狐者異は飲めば誰でも一流の職人になれる薬を持っている、自分の望みを当てて叶えてくれたらその薬を渡してもいいと言い出す。若だんなと日限の親分、左官の力蔵がこぞって狐異者の機嫌を取るが、兄やたちはいい顔をしない。やがて、その薬を巡って暴力沙汰や火付けにまで発展する。
…出だしの雰囲気、『夏目友人帳』(緑川ゆき)を連想しました。哀しい話。
 『畳紙』:紅白粉問屋・一色屋のお雛は厚塗りの化粧を止められない。病気の若だんなを見舞った帰り、見知らぬ印籠を持って来てしまったことに気付く。その晩、お雛の枕元に付喪神・屏風のぞきが現れる。屏風のぞきはお雛の悩み事を聞き、若だんなのアドバイスを得て、お雛と折り合いの悪い祖父母がこっそりとっておいた、お雛が今までに使った白粉の畳紙を見つけだす。
…着物じゃなくて白粉が入ってる紙も畳紙って言うんですね。これですぐ化粧が薄くなるとは思わないんだけど、きっかけになったらいいなぁ。
 『動く影』:若だんなが五つの頃の話。広徳寺から照魔鏡が盗まれた。近所の子供の間では、障子に写った影が動き回る、と言う噂が立っている。若だんなは子供達を組織して噂の大元を探し、田村屋の後妻・お美津の家へ辿り着く。
…幼少の若だんなが何とも可愛い(笑)。身体の弱い若だんながその頭脳明晰っぷりでみんなに認められる一編。
 『ありんすこく』:心臓を煩った吉原の禿・かえでを足抜けさせようと、長崎屋主人・籐兵衛と若だんなが骨を折る。だが同じ禿のまつばが裏切り、かえでにぞっこんの今出屋の三之助がかえでを連れて逃げ出してしまう。若だんなは自ら囮を買って出るが…。
…若だんなの女装はちょっと見てみたかったぞ(笑)。兄やの活躍がお見事。まつばの気持ち、解るなぁ。
 『おまけのこ』:櫛職人・八介が長崎屋の庭先で、誰かに殴られ倒れていた。持っていた真珠も無くなっている。犯人は判ったものの、真珠の行方が知れない。その頃真珠は鳴家(やなり)の一匹に拾われ、堀に落ちたり鴉に拾われたり、小さな冒険旅行をしていた。
…何か、『錫の兵隊』みたいな話(笑)。沢山の鳴家の中から「うちの子」を見つけだす若だんな、すごい(笑)。

 ほのぼのと可愛らしい話五編。少し哀しいエピソードもあるけれど、基本的にはハッピーエンド、安心して読めます。まぁその分、はらはらどきどきは少ないんですが(笑)。そうそう、若だんなが狐者異に「お入り」って言った時には、ちょっと大丈夫かな、と思ったっけ。次は長編らしいので、それも楽しみです。