読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

こうして誰もいなくなった 有栖川有栖著 角川書店 2019年

短編集。

 

館の一夜

 夜道を運転しながら、黒田卓也教授は思い出す。学生時代、民俗学のフィールドワークの帰り、美佳子と道に迷って辿り着いた不思議な洋館のことを。

 

線路の国のアリス

 車掌の格好をして懐中時計を持った白ウサギを見かけたアリスは、思わず後を追いかけます。辿り着いたのは線路の国、駄洒落が支配するわがままな女王のいる世界。

 

名探偵Q氏のオフ

 Q氏が助手を勤めるF嬢にしたプロポーズの顛末。

 

まぶしい名前

 スポンサー付きネームの発展した未来。

 

妖術師

 町はずれの公園に来たマジックショーは、よそでは絶対に見られないものらしい。二度と見られない人もいるとか。

 

怪獣の夢

 子供の頃から怪獣の夢を見た。大人になって世間を這い上がり、成功者になって行くに従って、夢の中の怪獣の役割も変わって行く。

 

劇的な幕切れ

 とあるウェブサイトで知り合った女性と、心中することになった。彼女のおぜん立てのまま、二人は山にハイキングに出かける。

 

出口を探して

 目覚めると迷路の中にいた。そこで見知らぬ男性と知り合う。二人で協力して脱出を図る二人。

 

未来人F

 怪人二十面相を捕まえて、明智小五郎先生は新たな仕事で海外へ行ってしまいました。その間、未来人Fを名乗る人物が東京国立博物館の松林図屏風を盗む、と予告してきました。未来を次々と言い当てる未来人Fは、本当に未来から来たのでしょうか。小林少年が明智先生に代わって怪盗を捕まえようと奮闘します。

 

盗まれた恋文

 とある国民的女優が書いた手紙を、取り戻した名探偵Z先生。だが、その手紙を読んで、Z先生もよからぬことを考え始める。

 

本と謎の日々

 店長は本は読まないけれど、数々の謎を解いてみせる。「瑕物の方がありがたい」という常連さんや、返品の際言われた「これから気を付けて下さい」という言葉の意味、POPが無くなった訳や、台風の日に何度か来た不思議なお客さんのことも。

 

謎のアナウンス

 空港で出会った男が語る、自分がスーパーに行くと流れる不思議な迷子アナウンスの真相。

 

 降りしきる雨の中の目撃談。

 

こうして誰もいなくなった

 三重県の伊勢湾に浮かぶ島に招待された六人の客と二人の従業員。順々に殺されて行く展開、あわせてへし折られる人形の首。誰が犯人なのか、また何故間に合わなかった筈の一人も死体となって発見されたのか。…

 

 まえがきに曰く、ノンシリーズものの中短編を集めたものだそうで。

 面白かったです。

 バカミス一歩手前というか、有栖川さんがとにかく楽しそう。探偵の造形なんか、本当、遊んでらっしゃいますよね。でもクリスティリスペクトの最終話なんかは、きちんと本格なんだよなぁ。

 二十面相ものって、私本編はそんなに好きではないんですが(というほど読んでないか)、パロディ作品見ると、面白そうに思えてしまう。

 有栖川さんの芸達者ぶりが堪能できる一冊でした。