読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

まんまこと 畠中恵著 文藝春秋 2007年

 連作短編時代小説。
 ネタばれあります、すみません;
 
 江戸時代、忙しい奉行所に代わって日々の雑多な揉め事を裁定する町の名主。高橋麻之助は神田の古名主、高橋宗右衛門の息子である。今年22歳の麻之助は、16までは生真面目で勤勉だったのに、ある日突然“お気楽な”若者になってしまった。今日も麻之助は幼馴染みの八木清十郎、相馬吉五郎とふらふらしている。
 
 『まんまこと』:女たらしの清十郎が困っている。太物問屋笠松屋の娘おのぶが、お腹の子の父親を清十郎だと言い出したらしい。清十郎にはまるで身に覚えがなく、でも普段の素行の悪さが災いして誰もそれを信じてくれない。実際おのぶに会ってみると、おのぶは麻之助と清十郎を取り違えて呼ぶ始末。元々おのぶは先月死んだ瀬戸物屋小倉屋の長男・亀太郎と許婚だったが、子供の父親は違う人物らしい。そのうち噂を聞きつけて、小倉屋の次男・半次郎が25両持ってやって来た。半次郎は、自分がおのぶのお腹の子の父親だが、おのぶと一緒になる気はないと言う。

 『柿の実を半分』:三池屋の小左衛門は妻と子を流行り病で亡くし、寂しい思いをしている。柿の実を盗みに来た麻之助をとっつかまえて、昔の恋の思い出を語る毎日。どんどん広がっていくその内容は、作り話だと丸判り。なのにいきなり、小左衛門の娘だと名乗る女・お紺が現れた。小左衛門自身はお紺を自分の娘だと一緒に暮らし始めたが、親戚連中は黙っていない。麻之助に調停を依頼して来た。

 『万年、青いやつ』:麻之助に縁談が来た。持ち込んできたのは幼馴染みで同心見習いの吉五郎、お相手は吉五郎のまたいとこに当たるお寿ず。病気で長いことふせっている水元又四郎を見舞っているうち、少々薹が立ってしまった娘。まるで乗り気になれない麻之助の元に、打物屋の松野屋から、誰のものか判らない万年青の鉢の持ち主を特定してくれ、と揉め事が持ち込まれて来た。麻之助と会った又四郎は、自分も万年青は大好きだから、真相を代わりに見抜いてやろうと言う。

 『吾が子か、他の子か、誰の子か』:清十郎の弟、幸太の祖父だと名乗るお武家が現れた。大木田七郎右衛門は、幸太の父は今は亡き自分の子松三郎だと言う。幸太の母は麻之助たちとも幼馴染みのお由有。お由有は清十郎の父、八木源兵衛の後添えに入っていた。松三郎の残した手紙から、麻之助たちは松三郎の本当の相手を探し始める。

 『こけ未練』:水元又四郎がいよいよ危ない、と手紙が来る。麻之助と清十郎は連れ立ってお見舞いに行こうとするが、狆は拾うは娘は拾うは、どうもすんなりとは行かない。「こりん」様と言う娘を探す岡っ引きに追いかけられ、川にまではまって、踏んだり蹴ったり。無事に水元家に辿り着けるのだろうか。

 『静心なく』:水元又四郎が死んだ。約束通りお寿ずとの縁談が容赦なく進む中、幸太が誘拐される。ショックで八木源兵衛は倒れ、お由有は動くに動けない。身代金の受け渡しには代わりにお寿ずが向かう。幸太を攫ったのは誰なのか、源兵衛の差配を恨んでいそうな人物を探して、麻之助たち三人が駆け回る。…

 可もなく不可もなかった、と言うのが正直な感想、ごめんなさい;
 面白くなかった訳ではないのですが、どうしても読む側のハードル上がってしまいますのでねぇ、読者のわがままだと思って下さい;
 麻之助の“お気楽”っぷりが今いち伝わってこなかったなぁ。麻之助の変化の原因がお由有さんだろう、と言うのはもう最初から察しがつきましたし。さすがに幸太坊のいざこざはそんな裏が、とは思いましたが。
 誰も、いわゆる恋愛結婚はできないんですね。それが時代とは言えるんでしょうが、誰もが意に添わない人と添うことになる。若いお嫁さんを貰った三池屋小左衛門さんは例外ですね。でも、お寿ずさんいいお嫁さんになると思うよ、麻之助さん。