読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

幾世の鈴 あきない世傳 金と銀 特別巻㊦ 高田郁著 角川春樹事務所 2024年

 『あきない正傳』シリーズ、番外編その2。

 第一話 暖簾
 明和九年(1772年)「行人坂の大火」の後。大坂の五鈴屋高島店八代目店主周助のもとに、紙屋 伊吹屋店主の文伍と名乗る男が訪ねてきた。用件は金の融通の依頼、文伍の息子 貫太は実は智蔵の忘れ形見だという。こっそり貫太の様子を見に行く周助。貫太は商才に溢れ、五鈴屋大坂店で流行らなかった藍染めの浴衣の欠点を見破る才覚を見せた。後継ぎ問題と、周助の元の勤め先桔梗屋への心残りが改めて浮かび上がる。

 第二話 菊日和
 大坂に戻る幸を見送り、江戸に留まって小間物屋菊栄を繁盛させようと努力を重ねる菊栄。新たな商品として根掛けに目を付ける傍ら、菊栄は惣次から大坂の実家紅屋の経営が危ないと聞く。

 第三話 行合の空
 江戸を追われた結は、播磨で旅館を営んでいた。すっかり覇気の無くなった夫に失望する毎日、40過ぎてから生まれた娘二人は、器量よく才気ある姉と甘えん坊の妹の関係が、自分たちを連想させて苛立たしい。新たな綿産地として播磨を行き来する仲買人たちが型染めの話をするのを聞いて、結は自分が持つ唯一の財 文字散らしの型紙を思い出す。もう一花咲かせたい、という焦燥と共に。

 第四話 幾世の鈴
 還暦を迎えた幸は賢輔こと九代目と共に、五鈴屋の後継を考えていた。そんな折、幕府から御用金を申し付けられる。決して払えない額ではないが、その使い道を考える二人。彼らの真意は奉公人に伝わるのか。…

 このシリーズは借りてきたら母が先に読むのですが、読み始めた母が一言。「えらいことになってるわ」「何?」「智蔵さんの子供が出てきた」「えええええーーー!!!」
 五鈴屋の後継者問題に絡んでくるのかと思いきや、そうではないようで。結さんの鬱屈も晴れたよう、それでも幸と賢輔が一緒になったと聞いたら胸がざわつくんじゃないかとは思うんですが。賢輔の両親からの、結婚相手としての幸評には、そういうとこちゃんとシビアに書くのね、とも思いました。
 一瞬 五鈴屋の跡取りとして幸が結の娘を引き取ったりするのかな、というのが頭をよぎったんですが、もうそういうのはないのね。お互いそうと知らぬまま、桂の作ったお守りを携えるだけの関係なのね。確かに、桂は桂で旅館の女将としてやり手になりそうだし。「わざと結の行く末は探していない」幸、根本では結を信じているんだろうなぁ。第四話はもうノブリス・オブリージュの世界でしたねぇ。
 さて、この続きは書かれるのか、何かありそうなあとがきではありました。