読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

邂逅(わくらば)の滝 遠田潤子著 光文社 2023年

 連作短編集。ネタばれになってるかも、すみません;

 ファウスト苔玉
 大阪、奈良、和歌山にまたがる深い山の中、紅滝と呼ばれる美しい滝がある。その昔、美しい姫が若武者に置き去りにされたという伝説があり、今も立冬の日に姫を祀る滝祭りを行う。
 5年前、町おこしの一環で、「紅姫」を選んで派手に儀式を行うことになった。選ばれたのは地元の旅館 瀧口屋の娘 瀧口暮葉。無事に勤めを終えたと思われたが、祭り見物に来たよそ者の車と事故にあい、死んでしまう。以来、途絶えていた紅姫選びが再開された。今回選ばれたのは瀧口美鳩、暮葉の従妹に当たる。不吉な流言に苛立つ暮葉の弟 奔。彼らは、暮葉の遺体が放置されていた町はずれ近くの空き家に移住して来た望月という名の男と知りあう。クラフトビールの輸入業を営む彼は、南天苔玉を大切に育てていた。

 アーム式自動閉塞信号機の夜
 大正の初め、みよは両親を相次いで喪い、瀧口屋に引き取られた。子供のいない夫婦の元で茶屋を手伝っていたが、事故で歩けなくなり、やがて養父も病死して、みよは客を取るようになる。
 仙造は客のうちの一人だったが、本気で愛し合うようになった。ある日、望月と名乗る男がみよを訪ねてくる。望月は仙造の婚約者の従兄で、みよが仙造と別れるよう説得しに来たのだった。

 犬追物
 安土桃山時代。太郎丸、次郎丸は同じく戦災孤児のあとりと共に、子供だけで暮らしていた。日々の糧は犬追物という興行に使う犬獲りをして稼ぐ。望月と名乗る武士が兄弟に目をかけ、犬を買い取ってくれていた。
  ある日兄弟は白い犬を見かけ、捕まえようとして誤って殺してしまう。その犬はお館から逃げ出した犬だった。代償として太郎丸が、犬の真似をして犬追いの催しに出るよう言い渡される。その興行で、太郎丸は馬に蹴られて死んでしまった。
 復讐に走る次郎丸。望月は逃げた次郎丸とあとりを追う。望月はあとりの想い人だった。

 緋縮緬のおかげ参り
 江戸時代末期。大坂道修町の薬種問屋に産まれたこうは、そのあまりの美貌に、かえって不吉を連想させた。実際、兄弟は全て亡くなり、こうの夫になった人物も次々に命を落として行く。こう自身は何事にも心揺れることなく、ただ神農さんにお参りする日々。だがある日、そこの神職 槇と出会い、運命が変わって行く。どうしようもなく槇に惹かれたこうは、二人で伊勢参りと称して駆け落ちし、だが伊勢本宮で槇は怖気付く。仕方なく大坂に帰る途中、山中の茶屋で、こうはその亭主 望月と出会った。この人こそが運命の人だと、こうは悟る。

 宮様の御首
 南北朝時代。政権争いに敗れた大塔宮護良親王は十津川に落ちのび、そこで士豪の娘 鶴子と恋に落ちる。お付きの望月も、鶴子の従妹で 病気のため盲目になった久礼と惹かれあう。浮上し、失墜する親王の運命に添って、翻弄される望月。身重の鶴子を守って逃げる山中、やはり身重の久礼を滝の傍に置き去りにすることになる。…

 不幸な言い伝えのある滝、時代を遡って大元のエピソードに辿り着く構成。…とか言いながら、どうして三話と四話目の時代が逆さまになってるのかなと首を傾げつつ。
 なかなかに不幸で粘着質な恋愛話の連続で、読んでてちょっとお腹一杯になりました。登場人物の皆さん、なかなか饒舌に心情を吐露されますし(苦笑;)。みよさんとか、子供ができたりしなかったのかな。
 私自身が恋愛体質じゃない所が、やりきれなくなった原因の大半な気がします、何だか申し訳ない(苦笑;)。