読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

仕事でも、仕事じゃなくても 漫画とよしながふみ よしながふみ著 フィルムアート社 2022年

 インタビュアーは山本文子氏。

全編語り下ろし、漫画家よしながふみ初のインタビュー本!

20時間超のインタビューを通して語られる、『大奥』『何食べ』へと至る幼少期からの歩みと一貫した仕事への思い、日々の生活での気づき、家族という集団に向けるまなざし、これからの展望、そして愛してやまない漫画について……

2020年末に完結した『大奥』が第42回日本SF大賞に輝くなど国内外で高く評価され、現在も連載中の『きのう何食べた?』では、ドラマ化・映画化の追い風を受け新たなファンを獲得し続けている漫画家よしながふみが、自身の歩みや自作の制作背景、愛してやまない漫画について語り尽くします。

本書は20時間超におよぶインタビューによって構成されており、『大奥』や『きのう何食べた?』はもちろん、商業デビュー作の『月とサンダル』、初めてBL誌以外で連載された『こどもの体温』、「月9」ドラマの原作となった『西洋骨董洋菓子店』、さまざまな女性たちを描いた『愛すべき娘たち』など単行本化された全作品について、よしながが自身の仕事観を交えながら語っています。さらに、幼少期の思い出、小学校、中学校時代に影響を受けた漫画、高校で所属していた漫研でのエピソード、大学時代の同人活動のことなど、プロデビュー前の話もたっぷりと収録。また『大奥』が完結したあとの、これからの展望も述べられています。

インタビューはBLに造詣が深く、これまでに何度もよしながへの取材経験のあるライターの山本文子が担当。山本のキレがありつつも慈愛に満ちたサポートによってオリジナルの思考や姿勢が照らし出され、よしながふみを堪能できる 1冊となっています。
カバー装画はよしながふみ描き下ろしです!  (出版社紹介文より)

 『きのう何食べた?』の新刊入ってるかな、と検索掛けたらこの本が引っ掛かりまして。「え、何これ、こんなの知らない」ってんで急いで予約入れました。
 …た、楽しい…! 読んでる最中も先が気になって、ついつい先の章を読んでしまいましたよ。おかげで読み通すのが結局遅くなりました;
 年齢が近いことも大きいと思いますが、ルーツとなってる漫画作品がほぼほぼ分かる!(爆!) で、よしながさんの漫画愛が半端ない!(笑) どの作品も肯定的にリスペクトを持って語られていて、よしながさん、いい人なんだろうなぁ。『美味しんぼ』をあんなに熱く語る人を知りませんもの。
 アニメ『おにいさまへ…』は私も友人にビデオ見せて貰ったなぁ!とにまにましてしまった。その後数日間、お嬢様言葉が抜けませんでしたわ(笑)、全国で似たようなことしてた人がいたんだなぁ(笑)。ローザンヌバレエコンクールの辛口批評の解説者も、私も未だに覚えています。
 激しく同意する一方、私はこんなに深くこの作品を読み込んではいなかったなぁ、としみじみ思うこともしばしば。『SLAM DUNK』って嫉妬する人がいないとか、『ベルサイユのばら』のアンドレが何一つオスカルに勝ってないのに自信満々だとか(笑)。
 小説読むのが苦手だとか(それでも『銀河英雄伝説』は読んだとか)、社会人経験がないというのは意外でした。
 私の初よしなが作品は、友人がお勧めで貸してくれた『西洋骨董洋菓子店(アンティーク)』。BL作品は、描いてらっしゃることは勿論知ってたのですが、『ジェラールとジャック』くらいしか読んでおらず、だから今回語られていた過去作品の自己解説も新鮮でした。勿論、既読作品の裏話もわくわくしましたし。『フラワー オブ ライフ』をなけなしの高校の時の記憶で描かれたとか、そういえば恩田陸さんも「30代のうちに書いて下さい!」って編集さんに言われて、高校生ものの『夜のピクニック』を書いたとかって仰ってましたっけ。
 私自身は、就職先が女性ばかりの職場だったので、いわゆる恋愛や結婚の圧力はそんなには感じませんでした(それでも少しはあったけど)。でも世間一般ではそんなにきつかったのかぁ。東京の人でもそんな風に感じていたんですね。『愛すべき娘たち』は私が「この漫画家さんはホンモノだ!!」と思った作品で(←上からですみません;)、この作品を読んで救われた人もいるんじゃないかしら。
 とにかく考え方が理知的でクレバー。今できる自分の精一杯を誠実に、という積み重ね。物語の骨子の精確さに、近年ではキャラクターの解像度も上がって、もう万能じゃん!(笑) でも、快進撃というよりも、これからも淡々と傑作を描かれて行かれるんだろうなぁ。楽しみです。