読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

残照 田中芳樹著 祥伝社 2023年

七百以上の城を陥し「神人」と畏怖された不敗の男。
「海に沈む夕日を見たい――」モンゴル軍を率いた漢人武将は、たった一つの夢を叶えるために地の涯を目指す。
歴史に埋もれた智勇兼備の名将の一生を描く!

国史上ただひとり、陸路で地中海に達した武将がいた。男の名は郭侃(かくかん)。祖父の代からモンゴルに仕え、攻城戦と砲兵に長けた漢人だった。1253年モンゴル帝国は、イスラム世界の征服とさらなる領土拡大のため「フラグの大西征」を開始。37歳の郭侃は、15万の蒙古軍部隊長として西方遠征の途についた。新兵器「回回(フイフイ)砲」をひっさげ、瞬く間に各地を陥落させる。だがエジプトを前に、隻眼の猛将バイバルスが立ちはだかり……。  (出版社HPより)

 う~ん、なかなか凄まじい。虐殺略奪当たり前の世界、一般人まで皆殺しにして死臭で城内に居辛かったとか、モンゴル軍そりゃ嫌われるわ。文化遺産にも構わなかったとか勿体ない、田中さん恨み骨髄(苦笑;)。
 そんなフラグ汗に奇妙な親しみを抱いて仕える郭侃。でも、長じて仕えるフビライには、冷めた感情しか持てない。この辺りは王としての魅力なのか、ただ単に相性なのか。歴代モンゴル王国の藩主が若死になのは酒毒のせい、ってのは初めて知りました。キリスト教イスラム教、この頃から仲が悪かったのね~。共通の敵に対してすら、手を結べなかったとは。
 とある人物が登場したらその略歴、生末がさらっと紹介されて、じゃあその人はもう出て来ないのかと思ったらそのエピソードが改めて「その時期に」書かれて、それに対する主人公等の態度が書かれて…というのがちょこちょこあって、ちょっと戸惑った一面も。う~ん、行きつ戻りつする感覚が、少々読み辛い;
 読み始めてすぐ出てくる「バトゥ」という人物を、私多分知ってるなぁ、父親が出自を疑われてとか聞いたことあるなぁ、確か題材にした小説読んでるよなぁ、と思って確認したら、読んでましたね、小前亮著『蒼き狼の血族』。これは、東西南北あらゆる方向に攻め入って行ったモンゴル軍の、別の部隊を描いた作品でした。従兄弟に当たるグユクに刺客を差し向けて、その結果らしきものがこの作品で書かれていたのが、自分の中で繋がって嬉しかったです。