シリーズ6冊目。第一部完結。
extra case. シンハライトは招く
スリランカで宝石店を覘いていた「私」は、宝石に詳しい「イケメン」に声をかけられる。
case.1 さすらいのコンクパール
コンクパール、メキシコ湾やカリブ海のコンク貝から取れるピンク色の真珠。ビルのオーナーでもある浜田家の父娘がエトランジェで首飾り、耳飾りを見立てた後、政府の調査員を名乗る男が現れる。調査員は浜田家の当主の幸福度を調べているという。調査員を追い返した後、正義は戦後、日本のドミニカへの移民政策について知る。
case.2 麗しのスピネル
管弦楽インカレサークルへの助っ人で、正義は「メイドとフットマン喫茶」の手伝いをすることに。偶然現れたリチャードは女性のお客様を連れており、その人は別の男に追われていた。ストーカーかと思われた男は現恋人、しかも女性の職業はタレントで、そのマネージャーをしているという。休職中の彼女は、仕事を続けるかどうか悩んでいた。
case.3 パライバ・トルマリンの恋
エトランジェに谷本さんがやって来た。クリームソーダでもてなす正義、パライバ・トルマリンを披露するリチャード。谷本さんはパライバ・トルマリンに関する中学時代の思い出を語る。親切のつもりが、友達を信じ切れていなかった「怪盗パライバ」の結末は、リチャードが導く結果となった。
case.4 転生のタンザナイト
正義の目の前に父親が現れた。ギャンブルに溺れ、ろくな職に就かず、DVに走る男は母親を亡くし、年金という収入減を失くし、家を失くした今、正義に纏わりつく。包丁を持ち出すほど精神的に追い詰められる正義。周囲に迷惑が掛かること、己の本性を怖れ、エトランジェを辞めることを決意する。
extra case. シンハライトは招く
イケメンさんに連れて行かれた先には、更に美形の金髪男性がいた。彼の名はリチャード・ラナシンハ・ドヴルピアン、彼女の妹が以前空港でお世話になった人物だった。シンハライトを交渉しながら、彼女 高崎蛍子は、二人がこの地にいる経緯を聞く。…
正義、イケメンだったんか――――い!!ってことが明らかになる一冊。というか、こういう言い方はあまり好きではありませんが、かなりの高スペック男子だった、ということが。
正義目線で書かれてるから、自己評価がとにかく低かった訳ですね。これまでにもこんな記述あったかなぁ、「メイドとフットマン喫茶」で中高生の女の子からきゃあきゃあ言われるような。二人の仲が誤解されてるな、って感じのは沢山あったけど。
周囲に相談できず自分で自分を追い込んでいった理由は結構深刻で、一人称で書かれているからか余計に「これ、確かにどうしたらええねん…??」と思いましたね。実際、救いの手が伸べられた後でも、警察に訴えて裁判所に訴えて、父親への処分なり何なりが着くまでとなるとどれ位時間かかるんだ?と眩暈がする思いですし。エピローグに当たる『シンハライト~』では、どうやらケリが着いた様子が描かれてましたね。
自己評価が低い原因も、心底で自分が信じられないからで、つまり自分に寄せられている好意に気付かないのも自分にそれだけの価値があるとは思えないから。自分から好きになった相手谷本さんはああいう人だしなぁ。あれは、振られたことになるのかな。彼女にしてみれば、恋人以上の評価をしてるんだけど。
「異邦の子犬を煮て焼いて」とか思わせぶりに部屋に誘っておいてついてきた正義に腹を立てるとか、リチャードの思惑は正義に全く通じてない様子です。意味が分かってるのかいないのか、「全幅の信頼」の前には形無し(笑)。
さて、次から新シリーズのようです。次巻に続きます。